1990年代

2012.05.04

25年目のキス(1999年)

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“ロンドンで一番”と言われたレシピで作りました。しかし!

 以前、このblogにコメントを書き込んでくれた女の子のblogを昨年からずっと読んでいて、今の就職活動のあまりの厳しさに涙しつつ、陰ながら応援していました。しかし無事に、この春から働いてらっしゃるみたい。自分も就職先が決まるのが遅かったので、他人事とは思えませんでした。本当におめでとうございます。感性豊かで真摯な女の子に、働く機会がちゃんと与えられる世の中であってほしいなあ。慣れるまでは大変だと思うけど、長くやっていれば必ず自分がやりたいことや自分らしいことが少しずつできるようになるので頑張って! と、人を励ましている場合ではなく自分も頑張らねば。そんな新入社員がいっぱい誕生した春、ということでOLが主人公の映画、ドリュー・バリモア主演・製作総指揮『25年目のキス』を見ました。しかし今は「OL」じゃなくて「サラ女」と言うって本当なんでしょうか?


 


 シカゴ・サン・タイムズ社で働く二十五才のジョジー(ドリュー・バリモア)は、語彙が豊富で文才はあるのに、真面目が過ぎて記事を書かせてもらえません。ところがワンマン社長(ゲイリー・マーシャル)の思いつきで、学生に扮して高校潜入ルポを書くことを命じられます。この企画が失敗すると自分のクビも危ない上司のガス(ジョン・C・ライリー)はジョジーに学園の王子様のガイ(ジェレミー・ジョーダン)や、美人のカースティン(ジェシカ・アルバ)と仲良くなるよう指示を出すのですが、ジョジーはついついさえない優等生のアルディス(リーリー・ソビエスキー)やコールソン先生(マイケル・ヴァルタン)と意気投合。学園の人気者たちには相手にされません。そんな姉の苦労を見かね、弟のロブ(デヴィッド・アークエット)までもが高校生として学園に潜入してジョジーを人気者にすることに成功するのですが……という物語です。


 


 OL生活が長いのでOL映画を見るのは大好き。でもOL映画を撮るなら、「ショートカットしない」ことを守ってほしい! 「美人」「肉体関係」などの理由で、面接とか試験とか業績とか然るべき段階をすっ飛ばして出世・転職・異動・昇格すると、OL仲間には確実に嫌われます。私が働いていた会社でも、美人で人気者のアルバイトの女の子が男性社員の支持を得て変則的に正社員に登用されそうになったことがあるのですが、男性と同様に面接や試験を戦い抜いた女子社員たちから猛反対の嵐が巻き起こり、見送りとなりました。私はそのとき忙しかったので、すべてが終った後に顛末を教えてもらったのだけど、知っていたらやっぱり一緒に反発しただろうなあ。ショートカットはする人もさせる人も「Kick your ass!」です。だからOL映画が、一番のお客様であるOL様の共感を得たいなら、「ショートカットしない」は鉄則。とことんショートカットでのしあがるOL映画は、『ショーガール』ぐらいえげつなくやってくれるなら見てみたいけど。



 ほとんどのOL映画は「身の丈に合ってない状況に放り込まれる」という発端に始まって、「つじつまが合うよう努力することで人間としても女としてもひと皮むける」という結末を迎えます。例えば、人気の映画『プラダを着た悪魔』ではダサくてファッションをバカにしているアンドレアが「人気ファッション誌の編集長のアシスタントに採用される」という身の丈に合っていない状況に放り込まれます。そして、そこには「ファッションおたくな女の子はバカばっかりで使えなかったけど名門大学を卒業して大学新聞の編集長もやってたあんたなら使えるかと思って採用した」という理由があるので、OLも納得の大抜擢になっています。


 


 しかし同じアライン・ブロンシュ・マッケンナが脚本を書いた『恋とニュースのつくり方』では、なぜローカル局をクビになったベッキーが、視聴率最低番組とはいえネットワーク局のディレクターに大抜擢されたのかがわかりにくいので、どうも映画に乗り切れませんでした。



 『お買い物中毒な私!』も、ファッション雑誌の編集部に採用されたくて送った文章が経済雑誌で採用されるなんて、「女の感性を生かす」という戯言=「ショートカット」としか思えませんでした(英語がわかる人は彼女の文才に納得できるのかな?)。 



『ブリジット・ジョーンズの日記』という人気作もOLが主人公でしたが、あれは『高慢と偏見』を下敷きにしているので、OL映画というより恋愛の映画という気がします。『ワーキング・ガール』はメラニー・グリフィスが素晴らしく可愛いのですが、ショートカットの嵐で、もう今のOLには受け入れられないはずです。そのようにOL映画はいっぱいあるけど、OLの共感をガッチリ得られて、時代を超えて長持ちする作品は実はとっても少ない気がします。


  


 この『25年目のキス』では、どんくさいジョジーが「二十五歳なのに高校生のふりをして潜入ルポを書く」という身の丈に合わない状況に放り込まれます。それを決めるのが「すべて思いつきで好き勝手に決裁するワンマン社長」で、そういう社長は現実世界にもいるので(私も会ったことある)、この大抜擢はおおいに納得できます。そしてジョジーを演じるドリュー・バリモアが、うら若き乙女とは思えないくらい(当時、二十四歳)、ましてや女優とは思えないくらい、もてない女の子に大胆に化け、そのブス可愛さといったらないので、映画の世界にすんなり入っていけました。


 


 しかもジョジーは、明るく元気なだけの女の子では終わりません。優しい人たちを騙そうとして騙しきれないジョジーはまるで、ビリー・ワイルダー監督『少佐と少女』のジンジャー・ロジャースや、フランク・キャプラ監督『オペラ・ハット』のジーン・アーサーや、プレストン・スタージェス監督『レディ・イヴ』のバーバラ・スタンウィックみたいに、最後に大人の女性の優しさと強さをちゃんと見せてくれます。エンドクレジットの甘酸っぱい演出も(必見!)、この映画を締めくくるにふさわしい素晴らしさでした。日本にはプロムがなくて本当によかったとつくづく思いますが、ジョジーの気持ちがわかる女の子は日本にもいっぱいいるんじゃないかな。高校時代、男子とほとんど口をきかなかった私も、そのひとりです。


 


 ジョジーの高校生活は学食とファストフードで彩られます。特に、ロブが学園で人気者になるために実行した、学食の食べ物を使ったある「秘策」には笑いました。あのシーン、大好き。パイやシェイク、デコレーションケーキ、アイスクリームなどチープな甘いものがいっぱい出てくる中で、ジョジーとコールソン先生の距離を一歩近づける大事な食べ物がブラウニーです。学園の人気者と仲良くなるためにジョジーは人気スポットのクラブに行き、「ガンジャケーキ」を勧められてマリファナ入りのブラウニーを食べてしまいます。それでブッ飛んだジョジーは、クラブのステージ上で下品にはじけてしまうのですが(このシーンのドリュー・バリモアも最高)、そんな恥ずかしい姿を見ても、コールソン先生は飾らないジョジーにますます好感を持つのです。怒られたり泥酔したり失敗したり、時には公衆の面前で無様な姿をさらさなければならないOLにとって、度量の大きいコールソン先生は最高にいい男! 



 ジョジーが食べたブラウニーはねっとりしたチョコレートクリームが塗られていてデビルズフードケーキみたいだったけど、せっかくの機会なので、前々から気になっていたロンドンのチョコレートショップのポール.A.ヤングさんのレシピでブラウニーを作ってみました(日本国内で翻訳本が発売されていないので以下に掲載しましたが、問題があったらすぐに削除します)。


cake ポール・A・ヤングさんのブラウニー

【材料】
・無塩バター 100g
・ゴールデンカスターシュガー 250g
・ゴールデンシロップ 75g
・70%ダークチョコレート 275g
・放し飼いの鶏の中くらいの卵 4個
・中力粉 70g
・ココナッツフレーク 50g
・ドライチェリー 100g

【作り方】
・オーブンを160℃に余熱する
・大きなソースパンで、バター、砂糖、シロップが滑らかになるまで溶かす
・火を止めてチョコレートを加え、よく混ぜる
・卵を溶いてチョコレートの混合物と混ぜ合わせる
・小麦粉、ココナッツを加え、十分に混ぜる
・クッキングペーパーを敷いた15cm×20cm×2.5cmのトレイに注ぎ、平らにならす
・チェリーをブラウニーの表面に散らし、20分間焼く
・オーブンから出して冷まし、一晩冷蔵庫で冷やす
・型から出して、ペーパーを取り除き、濡れたナイフを使ってブラウニーの端を切り落とし、好きなサイズの四角形に切る
・食べるときは室温もしくは温める
・密閉容器に入れて冷蔵庫の中で4日間保存できる

book ポール・A・ヤング著『adventures with chocolate』より



 料理研究家のデヴィッド・ルボヴィッツさんが、ポール・A・ヤングさんのブラウニーを「ロンドンで一番美味しい」と言っていたので気になっていたら、レシピ集が出版されていたので、その中の「黒サクランボとココナッツのブラウニー」を作りました(ドライクランベリーで代用)。しかし焼く温度が低いところに不安が…。これはねっとりタイプのガトーショコラのレシピに似ている? 過去、ねっとりタイプのガトーショコラを何度か作ったことがあるのですが、実は一度もうまく焼けたことがありません。不安を感じつつ、とりあえずレシピ通り一六〇度で二〇分焼いて取り出したら、生地がタプタプと型の中で波打って、どう考えても生焼け。それで再度、一七〇度に予熱したオーブンで一〇分焼いたら、表面が一センチくらい膨らんで裂け目ができていました。



 やっぱりこれくらい火を通さないとダメだろうと納得して粗熱を取り、一晩冷蔵庫で寝かしたのですが、翌日切ってみたら、まだネトネト過ぎて包丁でスムーズに切れません。ポールさんのオーブンではいいかもしれないけど、わが家のオーブンは、このレシピではダメみたい。次は生地を半分の量に減らして、一七〇度で二〇分~三〇分焼いて、中の方だけしっとりとなるようにしてみたいです。ガトーショコラ系は何が正解なのかがわからなくて難しい。でもそれって自分の中にイメージがないってこと? パンみたいな軽いパフパフのブラウニーじゃなくて、表面はカリッとして中がちょっとしっとりネットリどっしりしたブラウニーを作りたいのは確かなのだけど、果して、美味しいブラウニーとは!?


 


 

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2012.03.10

プロヴァンス物語 マルセルの夏(1990年)

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映画のタルトはもっと明るい色でツヤツヤしてた。

 昨年末、富山の母が魚津市の加積のりんごを送ってくれたので、最後の三個でタルト・オ・ポム(tarte aux pommes)を焼きました。日本のりんご産地最南端がこの加積で(富山県農林水産部のサイト)、他の産地より雪の降り始めが遅いぶん、じっくり完熟させられるため、蜜たっぷりの甘いりんごを収穫できるのだそうです。母は昔から、このりんごが大好きで、毎年どっさり送ってくれます。オープンタイプのりんごパイ・タルトが美味しそう…というと思い浮かぶのは、『ギャルソン!』や『港のマリー』などのフランス映画です。映画の中のタルトは私が普段、食べているものよりたいてい薄くて大きく、その外国規格の形状が、日本では味わえない美味しさと洗練を想像させます。イヴ・ロベール監督『プロヴァンス物語 マルセルの夏』に出て来るタルトも大きく、黄色い実がつやつやしていて、見るからに「幸せな家庭のおやつ」でした。


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マルセル スペシャルエディション [DVD]


 映画の舞台は二十世紀初頭のフランスです。オーベーニュでのマルセルの誕生から回想が始まり、その数年後、マルセイユ近郊のサン=ルーに引っ越したマルセル(ジュリアン・シアマーカ)一家が、母(ナタリー・ルーセル)の療養のためにプロヴァンスのベロン村の別荘で過した夏休みの思い出が描かれます。広大な丘陵地帯で、父・ジョセフ(フィリップ・コーベール)と叔父のジュール(ディディエ・パン)が楽しみに計画していたのは、山うずらやウサギの狩でした。しかし、町の教師である父にとっては初めての経験で、尊敬する父が恥をかくのではないかとマルセルは気が気ではありません。狩猟の解禁日、陰から父を応援するため、父と叔父の後をこっそりつけて行ったマルセルは、途中で道に迷ってしまい……という話です。


 


 戯曲家、詩人、映画監督のマルセル・パニョルの少年時代の回想記が原作で、描かれているのは一九〇三年頃のフランスだと思われます。主人公のマルセルは三歳にして文字が読めた賢い子です。しかし、鼻クソを人差し指の爪で掻き出すのを得意としていたり、臍のボタンを外して赤ちゃんを産むと信じ込んでいたりする、普通の子どもでもあります。そんなあどけないマルセルが、狩に不慣れな父を心配し、丘の上からこっそり後をつけ、丘の上と下で息子と父が平行線を描く画が面白いです。しかし、いつの間にか、獲物を見つけるはずの自分が自然に惑わされ、父の誇りを守るつもりが自分自身の誇りが危機にさらされていることにマルセルは気付きます。父との平行線が崩れてからこそが、マルセルの物語の本当の始まりなのでした。さらに、同じスペインからの移民の子孫でありながら、宗教や自然から離れてしまった父と、熱心なカトリック教徒で狩猟が得意な叔父との対比や、マルセルとは生活も知識も異なるプロヴァンスっ子のリリの存在が、夏休みのささやかな思い出に、歴史や時代の重みを持たせます。


 


 そんなマルセルにとって、お母さんはひたすら美しく優しい“永遠の十九歳”で、大切な恋人のような存在です。実際、お母さんを演じるナタリー・ルーセルがあまりに可愛らしく美しいので、気になって調べてみると、彼女は、『女の都』や『ファニーとアレクサンデル』『ラルジャン』『ノスタルジア』など数々の名作のプロデューサーとして知られるダニエル・トスカン・デュ・プランティエの息子と結婚し、子どもが二人いて、主にテレビで活躍しているのだそうです。しかもダニエル・トスカン・デュ・プランティエは、奥さんをアイルランドのコークの別荘で何者かに殺害された「ソフィー・トスカン・デュ・プランティエ事件」という未解決事件でも有名な人物とのこと。プライベートでもなかなか劇的な人生を送っている女性のようですが、美味しそうなタルトは、そんなナタリー・ルーセル演じる美しいお母さんが、オーベーニュの家でマルセルに食べさせるおやつとして登場します(原作には出てこない)。


 


 どっしりしたクローズドタイプのアップルパイというと昔のアメリカ映画にいっぱい出てきますが、タルト・オ・ポムはどれぐらい古い、定番菓子なのでしょうか? この映画の原作で登場するのは実は「クリームをかけたアーモンド入りのパイ」と「泡雪クリームをかけた杏パイ」です。一八九七年に発表された戯曲、エドモン・ロスタン著『シラノ・ド・ベルジュラック』に出てくる有名なタルトレットの製造法の詩も、中に入っていたのは「杏」でした。 『エリザベス・ゴールデンエイジ』で今よりもさらに下手糞なりんごタルトを作ったときは、十六、十七世紀のイギリスの料理書のりんごタルトについて調べまくっていたのですが、フランスはどうなんでしょうか? なにしろフランス語がわからないので、ヒントを求めて、バーバラ・ウィートン著『味覚の歴史 フランスの食文化 中世から革命まで』(藤原書店)を読んでみました。すると一六五三年に出版された『Le Pâtissier françois』に、りんごタルトの原型が掲載されているようです。


 


 それはtourte d'œuf aux pommesという菓子で、復刻された原書を見てみると、確かに掲載されていました。現在のようなタルトではなく、りんごと砂糖、小麦粉、卵を混ぜたものをトゥルティエールという型に入れ、オーブンで焼く、というもので、タルト・オ・ポムとは違うのですが味は似ていそうです。ではタルト・オ・ポムはいつ料理書に登場するのでしょうか? バーバラ・ウィートンが次に紹介していた、さらに約百年後に出版されたヴァンサン・ラ・シャペル著『現代の料理人』(一七四二年)を見てもパイやベニエのレシピはいっぱい載っているのに、甘いタルトは見当たりません。それがうってかわって、一八〇八年に出版されたムノン著『ブルジョワ家庭の女料理人』を見ると、マーマレードやコンフィチュール、タンバル、シロップ、メレンゲなど甘いものがどっさり掲載されていました。そしてフィユタージュを薄くのばした上にクリームやコンフィチュールを乗せてオーブンで焼いて上から砂糖をふりかける、Tartelettesのレシピを発見!


 


 しかしまだタルト・オ・ポムに辿りつけません。さらに約百年後、十九世紀のレシピをまとめた料理書の決定版というと、オーギュスト・エスコフィエ著『Le Guide Culinaire』(一九〇三年)です。見てみると、タルト生地の作り方は掲載されているのですが、「tarte aux pommes」そのものは載っていませんでした。しかし昼食のメニュー例の中にフルーツタルトが…!


エスコフィエ『Le Guide Culinaire』の昼食のメニューより

オードブル
卵のココット
舌ビラメの悪魔風グリエ
キジのポワレ セロリ添え
フォアグラのパルフェ
秋のサラダ
チョコレートスフレ
フルーツタルト



 それでも、タルト生地のレシピは載っていても、フルーツタルトのレシピは載っていません(シャンピニオンのタルトやアニスのタルトなどはある)。紹介するまでもなく定番だったということなのでしょうか? タルト・オ・ポムについては、またいろいろ調べてみたいと思います。とりあえず私のりんごパイは、『しあわせの雨傘』で紹介したキッシュと同じ生地で作ることができる、リチャード・オルニー著『The French Menu Cookbook』のレシピで作りました。紅玉で作るのがおすすめとよく言われますが、私は普通のりんごで作った酸っぱいタルト・オ・ポムも嫌いじゃないです。下の分量だと、21cmの型だと生地がちょっと足りない感じでした。中力粉を100gくらいにしても大丈夫じゃないかと思っております。


apple リチャード・オルニーのタルト・オ・ポム

【材料】
●生地
・中力粉 83g
・塩 ひとつまみ
・バター 6tbs(3オンス)
・冷水 2と1/2~3tbs 

●フィリング
・ラセット種のりんご 453g
・バター 4tbs
・シナモン ひとつまみ
・卵 2個
・砂糖 100g
・生クリーム 280ml

【作り方】
・小麦粉と塩をふるいにかけたらボウルに入れ、サイコロ状にカットしておいたバターと指かナイフで混ぜる。バターは冷たく固いまま粉によく練り込み、ドロドロのピュレ状にならないよう気をつける。冷水を加えてネバネバのかたまりにしてサランラップで包み、二時間冷蔵庫にねかしておく。
・打ち粉をした板の上で生地の玉に打ち粉をして丸いパティの形にし、すばやく伸ばしてパイ皿かタルト皿に敷く。焼いている間に生地が変形しないようにフォークで生地を数箇所さして穴を開けておく。タルト皿に敷いたパイ生地の上にクッキングペーパーを乗せ、焼いている間に生地が膨らまないようにパイ用重石や渇いた豆、生の米などを置く。 15分ほど175℃~190℃で焼く。重石とクッキングペーパーを取り除いて、さらに3~4分焼く。
・りんごの皮をむき、芯を取ってスライスし、やわらかく半透明になるまでバターで加熱する。ただし、形を崩さないように気をつける。ラセット種のりんごは独特の香りを持っているだけでなく、いい形をしている。
・焼いたタルトの底にりんごのスライスを並べて覆い、シナモンをわずかにふりかける。
・黄色が明るくなるまで、卵と砂糖をかき混ぜる。
・生クリームに混ぜて、タルトに敷いたりんごの上にその混合物を注ぐ。
・卵液が固まり、タルト生地が金色になるまで中火のオーブンで焼く。
・粗熱を取って、温かい状態で給仕する。



 

 

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2011.02.18

沈黙の戦艦(1993年)

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ミズーリ号のパイはオーブンの中で焦げてしまう。

 スティーブン・セガール作品って、テレビでやたらと放送されてましたが、恥ずかしながら、最初から最後まで見たのはこの『沈黙の戦艦』が初めてです。百戦錬磨でムキムキの強靭な男、スティーブン・セガールがコックに身をやつして登場する映画らしいと聞いて、いつか見たいと思ってたのでした。監督はアンドリュー・デイヴィス、トミー・リー・ジョーンズとゲイリー・ビジーが敵役です。



 退役が決まったミズーリ号では、艦長(パトリック・オニール)の誕生日のサプライズパーティーが計画されていました。ところがヘリコプターでゲストとしてやってきたミュージシャンのストラニクス(トミー・リー・ジョーンズ)らの一団が、クリル中佐(ゲイリー・ビジー)と組んでミズーリ号の乗っ取りをはかります。彼らの目的は戦艦に搭載しているトマホークを奪うことでした。そんな事件の最中、上官に逆らった罰で貯蔵庫に閉じ込められていたコック長のライバック(スティーヴン・セガール)が単身、敵の計画の阻止と仲間の救出のために戦うという映画です。


 


 本当にスティーヴン・セガールはコック帽を被り、にんにくや唐辛子や銅鍋が吊るされ、コッペパンやセロリや生肉が並ぶキッチンにいました。そしてハワイから料理を空輸させるという上官に反抗し、「艦長が俺の作った料理以外を喜ぶかな」と、艦長の好物のブイヤベースを作るためにキッチンを動かない姿がけなげ! メレンゲたっぷりのパイもオーブンに入れられ、冒頭はこれからどうなるのかと本当にワクワクします。貯蔵庫から脱出したセガールはまず電子レンジに爆弾を仕掛けたので、秘密部隊で培った戦闘能力と料理の技術を駆使して敵をやっつける映画だったら楽しすぎる!と思いましたが、その後は料理人の腕が発揮されることはありませんでした。


 


 トマホーク強奪を阻止するために料理が活躍することはありませんが、敵も味方も主要人物には何かと料理との絡みが用意されています。クリル中佐は、セガールのブイヤベースに痰を吐く、その吐き方一発で、彼の狂気と悪意の凄まじさを見せ付けます。そしてヒロインのジョーダン・テイトが裸に海軍の制服を着てケーキから飛び出すところは名シーン! パイ投げ同様、ケーキから女の子が出てくるシーンがあるだけで、もうその映画は十分楽しいと言いたくなります。ジョーダン・テイトはバカとしか言えない女なのですが、巨乳を曝け出すセクシー要員の割には、演じるエリカ・エレニアックがショートカットで眉毛が太くて少年のようで、セガールと並ぶと父と息子のように見えるという不思議なコンビネーションの魅力を放ってました。


  


 トミー・リー・ジョーンズはバンドマンとして戦艦にやってくるのですが、どうやら歌えないしギターも弾けないと思われるのに、ノリノリのライブシーンを演じなくてはならず、ブルースハープとテンションの高い演技でごまかして頑張ってます。顔だけはどことなくキース・リチャーズに似ているのに…。ローストビーフを手づかみで野蛮に食べたり、エビを両手に持ってふざけたり、食べ物の扱いも悪ノリしてて、他の作品ではあんまり見られない姿が楽しめるのではないでしょうか。渋くて知的なイメージに合わないような気もするのですが、シリアスな社会派映画にも出るけど二流のサスペンス映画にも出るし、日本の缶コーヒーのCMにも出るよ、と意外と何でもやっちゃうところもトミー・リー・ジョーンズの魅力のひとつだと再認識できます。


 


 セガールが艦長のために厨房で作っていたのはブイヤベースとメレンゲの乗っかったパイです。その二つが艦長の好物ということなのでしょう。ブイヤベースとアメリカンパイ。まさに艦長は海とアメリカを愛する男です。しかしブイヤベースは反逆者に痰を吐かれ、パイはオーブンで真っ黒焦げにされてしまいます。国の威信と領海を守るためのセガールの戦いが始まるのは、まさに厨房からなのでした。私は日本国民ですが、パイを研究中なので、ミズーリ号で作られていたようなメレンゲたっぷりのパイを作ってみました。『ローラーガールズ・ダイアリー』のパイとはまた異なるパイです。


 


 最近の難関はカスタードクリームでした。オムレツやアイスクリームやスフレなどがうまくできず台所で泣き崩れてきた私ですが、カスタードクリームも何をどうしたらいいのかわからなくてメソメソ泣いていました。料理本やレシピサイトを見ていると判で押したように、「加熱して焦げないようにかき混ぜていればもったりしてきて、そのうちツヤツヤになる」としか書いてないのですが、それだけではわからない現象が鍋の中にいろいろ生じるのです。しかし最近やっとカスタードクリームの何たるかがわかってきたような気がします。 『料理長殿、ご用心』でナターシャの料理の腕を褒め称えて「彼女の卵の扱いは世界一だ」というセリフがありましたが、そういえば私が泣いてきた料理はどれも卵の熱凝固を繊細な調理法で微妙にコントロールするものばかり。私が素人で初心者でヘタクソなだけでもあるのですが、今の気持ちは「卵を制する者は料理を制す」です。シクシク。


 


 パイ生地はいろいろ試しているところですが、どうしても日頃使わないショートニングを使うレシピなどは抵抗があるので、シンプルにバター、中力粉、水で作る、ファニー・ファーマー著『Boston Cooking School Cook Book』の一九一八年版(初版は一八九六年)のレシピを参考にしています。そして、せっかくなのでカスタードクリームの作り方もファニー・ファーマーの本で調べてみました。ところが「custard」で調べるとプリンのようなものばかりしか見つかりません。『Boston Cooking School Cook Book』はフランス料理の影響がおおいに見受けられるので、では「crème pâtissière」で載ってないかと思ったのですがありません。結局「CAKE FILLINGS AND FROSTINGS」の章に、「Cream Filling」として紹介されていました。分量やレシピは現在使われているものとあんまり変わりません。


 


cake カスタードクリームフルーツパイ
【材料】
◎パイ生地
・中力粉 100g
・バター 125g
・水 65ml

◎カスタードクリーム
・卵黄 2個
・バニラビーンズ 1/3鞘
・グラニュー糖 50g
・牛乳 200ml
・薄力粉 18g

◎メレンゲ
・卵白 2個
・砂糖 40g

◎季節の果物

【作り方】
(パイ生地)
・室温もしくは電子レンジでバターをやわらかくしておく
・中力粉に大さじ2のバターを混ぜ、水を加えて指で全体になじませてひとかたまりにする
・打ち粉をして5分間こねる
・固くしぼったふきんかサランラップで包んで5分間置く
・めん棒で生地を約5mmの厚さの横長の長方形にする
・バターを生地の真ん中より下に置き、上部の生地を折ってバターを包み、しっかりと端を押してできるだけピッタリと閉じる
・生地の右側をバターの上に折り畳み、左側をバターの下に折り畳み、生地を180度回転させて、固くしぼったふきんかサランラップで包んで5分間ねかせる
・打ち粉をしながらめん棒で約5mmの厚さにのして、今度は縦長の四角形にする
・再び端から真ん中に向って3層に折り畳み、生地を180度回転させて、固くしぼったふきんかサランラップ包んで5分間ねかせる
・横長にのす手順と、縦長にのす手順を1回ずつ繰り返す
・再び横長にのして、両端を中央に2回ずつ折り曲げて4層を作り、冷蔵庫で一晩ねかせる
・パイ皿に敷いて180℃のオーブンで25分焼く

(カスタードクリーム)
・バニラビーンズの鞘から種をこそげ取り、牛乳を沸騰直前まで加熱する
・卵黄と砂糖を泡立て器で白いクリーム状になるまでかき混ぜる
・薄力粉を加えて混ぜてから、漉した牛乳を少しずつ加えながらその都度混ぜる
・混ぜたものを漉してから再び鍋で加熱する
・鍋の底が焦げないようによくかき混ぜる
・もったりして固まってきても、そのまましばらく絶え間なくかき混ぜたら滑らかになる
・バットに移し、表面をピッタリとサランラップで覆い、バットを冷水につける
・冷えたら冷蔵庫で冷やす

(仕上げ)
卵白と砂糖を泡立て器で白く角が立つまでかき混ぜてメレンゲを作る。焼いたパイにカスタードクリームを敷き、好みの果物を並べ、上にメレンゲを乗せる。220℃のオーブンで5分間焼いて、メレンゲに焦げ目を付ける。冷蔵庫で冷やして食べる。


 


 


 


 


 

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2010.03.23

宋家の三姉妹(1997年)

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映画の月餅は36個の卵で作ったそうです。私は卵1個で2つの月餅。

 2009年10月、日比谷野外音楽堂で開催されたエレファントカシマシのライブに行ってきました。しかも2日連続で……。バカ? 『扉の向こう』を見ていた頃は、もう少し自制心があったのですが……。そのライブがDVD化され、この3月に発売されました。2日目のある曲のイントロの間、首を傾げて腰をさすっていたら、宮本浩次が私を見ながら同じ角度に首を傾げた(ような気がした)ので、夢みたいと思いました。その瞬間をDVDで確認したかったのですが、収録されていた映像は、そのときにキーボードを弾いていた蔦谷好位置さんの姿でした。電波なファンが見た夢だったのかもしれません。雨の中のライブ映像は迫力があって感動的でした。客席にいるときはステージの床まであんなにビシャビシャとはわかりませんでした。ライブを見ると歌のうまさ、声の美しさ、熱い演奏に圧倒されます。特に日比谷野音ライブは地味な歌やエキセントリックな歌も演奏してくれたので、さらにそう感じました。


 


 本当はライブの前に日比谷公園内の松本楼で腹ごしらえでもしようかと思ったのですが、1日目はすごい雨、2日目は遅刻でそれどころではありませんでした。松本楼といえば、夏目漱石の『野分』や穂積歌子の日記などに登場する洋食屋の老舗。そして孫文がよく訪れたことでも有名なのだそうです。そういう歴史を踏まえ、2008年に胡錦濤国家主席が来日した折に、福田元首相が主催した非公式な食事会の場所も松本楼でした。というわけで孫文ってどんな人だっけ? ということで、孫文が出てくる『宋家の三姉妹』を見ました。香港出身の女性、メイベル・チャンが監督です。ちなみにDVD特典のメイベル・チャンのインタビューは、松本楼で行われています。


 


 


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建物は2回も焼け、孫文の時代のものではないそうです。


 はっきり言って美人でゴージャスな三姉妹、四姉妹が出てくるだけで盛り上がりませんか? 『若草物語』『三人姉妹』『細雪』『犬神家の一族』『阿修羅のごとく』『キャッツ♥アイ』など、どれも美人姉妹の活躍にワクワクさせられます。この映画も、浙江財閥の宋家に生まれ、幼い頃から留学してアメリカの大学を卒業し、日常会話は英語、日常食は西洋料理というゴージャスな三姉妹が主人公で、長女の靄齢(ミシェル・ヨー)は孔子の子孫の大金持ちと、次女の慶齢(マギー・チャン)は孫文(ウィンストン・チャオ)と、三女の美齢(ヴィヴィアン・ウー)は蒋介石(ウー・シンクオ)と結婚します。三人分の一生を語るので大味にならざるをえないところもありますが、面白くないわけがないです。


 


 とはいえ政治の話って映像で見せにくいですよね。この映画は船、汽車、飛行機、車、馬、人力車、車椅子などの乗り物と靴を使って、変わりゆく中国や歴史的な事件を見せていくところに工夫がありました。そして食べ物を使って、近代中国の華洋折衷生活が表情豊かに描かれています。長女の結婚式でチーズをつまみ食いしてオエーッと吐き出していた使用人が、三女の結婚式の頃には美味しそうにチーズをつまみ食いするように変わる、なんてシーンなどがありました。バーできどって「あちらのお嬢さんに…」とやるように、京劇を鑑賞する洋装の宋親子に蒋介石が「あちらのお嬢さんに点心を」みたいな感じでご馳走するシーンも、チグハグで面白いです。蒋介石は宋美齢と結婚後も、宋家のみんながナイフとフォークで西洋料理を食べる中、ひとり箸で中国料理を食べる人物として描かれていました。

 食べ物の中で最も気になったのは、母の死を目前に久々に集まった三姉妹が中秋節に食べる巨大な月餅です。卵を36個も使って作られた月餅を見て蒋介石は「割と小さいな」と言い、孔祥熙が「これでも上海では一番大きいんだよ」と笑って、日本人や共産党のストのせいで物資が不足していると言います。月餅は行事の食べ物であるだけでなく、富の象徴でもあるんですね。映画の月餅はカーリングのストーンをつぶしたような形状で、内側の円の縁に焦げ目がついていて、円の中に模様が刻まれていました。それをケーキやタルトのように切って食べています。ちなみに月餅と一緒に蟹も食べてました。



【月餅】 大月餅 黒(黒つぶあん) 聘珍樓の月餅


 月餅のレシピを調べたら、作り方は地域や店、家庭によって様々のようなのですが、私が見つけたものはみんな卵を使わないのです。『新中国料理大全(1)北京料理』(小学館)の北京飯店のレシピは、小麦粉、パイナップルジュースと砂糖を煮詰めたシロップ、落花生油、かん水で皮を作ってます。『点心と小菜 中国料理の演出』(鎌倉書房)の広東風月餅でも、薄力粉、カスタードパウダー、ピーナッツ油、かん水、砂糖シロップで皮を作ってます。『随園食単』(岩波文庫)には「劉方伯の月餅」と「花辺月餅」が紹介されていますが、両方とも皮は上等な小麦粉にラードや生の豚脂を混ぜるだけでした。卵を使うのは、実は華洋折衷のレシピだったりするのでしょうか?

 


 最後にもう一つ気になったのは、1940年に抗日戦線の兵士を三姉妹が慰問した際に、女性歌手が歌う「蘇州夜曲」に兵士たちがしみじみと聞き入るシーンです。私もこの曲が好きで、満州生まれのジャズピアニストの秋吉敏子のカバーを耳コピしたものですが、西条八十作詞、服部良一作曲の歌を中国人がしみじみ聞くなんてありえたのでしょうか。気になって四方田犬彦『日本の女優』を再読していると、「蘇州夜曲」は1940年公開の『支邦の夜』(東宝)によって日本でヒットした歌であり、中国で李香蘭を有名にしたのは1942年公開『萬世流芳』(中影・中聯・満映)の「売糖歌」だと書かれています。実際のところはどうなんでしょうか。


 


  


 松本楼には宋慶齢が弾いていたピアノが展示されています。1900年から国産ピアノの製造を始めたヤマハが、1907年に作った型なんだそうです。間近で見てみると、燭台が2つ付いていて、中央の板には美しい彫刻の装飾が施されていました。長い時間を超えてきた、いかにも古風なお嬢様ピアノ。なんだか激動の時代を生きた宋慶齢のイメージにピッタリで、眺めていると、墓前にでもいるような気持ちになりました。


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宋慶齢が弾いていたピアノがロビーにありました。


 


 



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2010.02.22

ノッティングヒルの恋人(1999年)

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ブラウニーはアメリカのお菓子。

 こんな人気作品をTVで切れ切れでしか見たことがなかったので、『いつか晴れた日に』でヒュー・グラントを見たついでに改めてちゃんと見ました。

 ヒュー・グラントが演じる主人公のウィリアム・タッカーは、ちょっと『いつか晴れた日に』のエドワード的な人物かもしれません。監督のロジャー・ミッチェルは1818年に出版されたジェイン・オースティン著『説得』をドラマ化している人だし(BBCテレビ「待ち焦がれて」)、脚本のリチャード・カーティスは『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズの脚本も書いている人だし、ジェイン・オースティン的なテイストもちょっと意識して作られたラブコメなのでしょうか? 19世紀のイギリスのような貴族の男とジェントリの娘などという身分の差は描けないから、さえない旅行専門書店主のウィリアム・タッカー(ヒュー・グラント)とハリウッド女優のアナ・スコット(ジュリア・ロバーツ)という格差を作ってみましたということなんでしょうかね。映画の中には、アナのセリフの練習に付き合うウィリアムが「おもしろいよ。ジェイン・オースティンやヘンリー・ジェイムスじゃないけどね」というシーンもあります。

 しかし残念ながら私には「きれい」以外のアナ・スコットの魅力がよくわかりませんでした。これ、英語がわかる人なら会話ににじみ出る彼女のユーモアや機知がわかって、もっとこの恋愛映画に入り込めるのでしょうかね。



 この映画を見てつくづく思ったのは、エルビス・コステロが歌う主題曲「She」を自分の結婚式の入場曲に選んだ藤原紀香ってすごいねーっ!ということです。いや、ファンなんですけどね。うちには母が姉と私に「見習いなさい!」と言って送りつけてきた『紀香バディ!』(講談社)があります。どうせなら『紀香バディ!2 リ・ア・ル』も送ってほしい。「She」はもともとはシャルル・アズナブールが作曲して歌ってます。


 


 この映画で印象的な食べ物といえば、アナが飛び入り参加したウィリアムの妹のバースディパーティのデザートにみんなで食べるブラウニーです。ウィリアムの友人のマックス(ティム・マッキナリー)が「アナ、君を見ていると俺たち英国人は成功にはほど遠いって思うよ」と言いながらブラウニーを食べるのですが、舞台はイギリスなのにブラウニーはアメリカの菓子なんですよね。そして最後に一個残ったブラウニーを一番みじめな人間が食べることができるというゲームが始まり、みんな自分がいかに悲惨な人生を歩んでいるかを語り始めます。

 ブラウニーのオリジナルレシピを求めて、まず本間千枝子さんが『アメリカの食卓』(文春文庫)の中で「アメリカで一八九六年以来料理書のバイブルといわれて版を重ねてきた」と紹介した、ファニー・ファーマー著『Boston Cooking School Cook Book』初版(1896年)を調べてみました。ちなみに『アメリカの食卓』には、『ジュリー&ジュリア』のジュリア・チャイルドの登場が長年アメリカで暮らす著者の目にどのように映ったのかを描いた文章も収録されています。映画を見た後にそれを読んで改めて、なぜそんなにも多くのアメリカ人がジュリア・チャイルドの料理と本と彼女自身を愛したのかがわかるような気がしました。

cake 『Boston Cooking School Cook Book』1896年版のブラウニー

【材料】
・バター 1/3カップ
・粉砂糖 1/3カップ
・溶き卵 1個
・グルテン麦粉 7/8カップ 
・プエルトリコの糖蜜 1/3カップ
・ペカンナッツ 1カップ

【作り方】
材料を混ぜ合わせる。小さい浅いケーキの型に入れて焼き、半分のペカンナッツは表面に飾る。

 あれ? チョコレートは? プエルトリコの糖蜜って!? と現在とずいぶん違うレシピにビックリします。ところが1906年版を見ると、上記のレシピとともに、以下のブラウニーのレシピも掲載されています。

cake 『Boston Cooking School Cook Book』1906年版に追加されたブラウニー

【材料】
(ts=4.92ml)
・砂糖 1カップ 
・溶かしバター 1/4カップ
・卵 1個
・製菓用チョコレート 2個
・バニラエッセンス 3/4ts
・小麦粉 1/2カップ
・くるみ 1/2カップ

【作り方】
材料を混ぜ合わせる。7インチの正方形の型にオーブンシートを敷く。混ぜた材料を型に流し込み、オーブンで焼く。オーブンから出すとすぐに紙を取り除き、鋭いナイフで細長く切る。この通りにやらなければ、紙がケーキにくっつき、細長く切ることができなくなるだろう。

 ホッ! こちらはほぼ現在のブラウニーのレシピと同じです。しかしバターが少なくて砂糖が多いのが気になります。


 


 1907年に出版されたマリア・ウィレット・ハワード著『Lowney’s Cook Book』にもブラウニーのレシピを2つ見つけました。こちらはボストンのThe Walter M. Lowney Co.という会社が出版した料理書で、表紙は「LOWNEY’S BREAKFAST COCOA」なんていう商品の広告になってます。

cake 『Lowney’s Cook Book』のバンガー・ブラウニー

【材料】
(ts=4.92ml)
・バター 1カップ
・製菓用チョコレート 3個
・ブラウンシュガー 1カップ
・小麦粉 1/2~3/4カップ
・卵 1個
・くるみ 1カップ
・塩 1/4ts

【作り方】
すべての材料をボウルに入れて、よく混ぜる。バターを塗った型に均等に流し込み、焼いて細長く切る。

 砂糖や小麦粉、卵の量に対して、バターとチョコレートが多いです。かなりネットリしているブラウニーと思われます。なぜバンガー(bangor)なんでしょうか!? もう一つ掲載されていたのは以下のレシピです。

cake 『Lowney’s Cook Book』のルーニーズブラウニー

【材料】
(ts=4.92ml)
・バター 1/2カップ
・卵 2個
・砂糖 1カップ
・くるみ 1/2カップ
・ルーニーズプレミアムチョコレート 2個
・小麦粉 1/2カップ
・塩 1/4ts

【作り方】
バターをクリーム状にして、残りの材料を加える。バターを塗ったシートに材料を混ぜ合わせた物をひろげて、10分~50分焼く。オーブンから出したらすぐに正方形に切る。

 こちらは自社製品「ルーニーズプレミアムチョコレート」の宣伝レシピですね。ルーニーズプレミアムチョコレートの量がわからないのですが、砂糖の量は多めとはいえ現在の味に近い穏当なレシピのように思われます。

 この後の時代の料理書ではブラウニーのレシピがポツポツと見つかります。しかしWoman's Institute of Domestic Arts and Sciences著『Woman’s Institute library of Cookery』(1921年)や、エリザベス・ヒラー著『52 Sunday Dinners A Book of Recipe』(1913年)には、チョコレートではなく糖蜜を使うレシピが載っているので、しばらくは糖蜜のブラウニーも作られていたと思われます。『52 Sunday Dinners A Book of Recipe』はバターやラードの代用物であるcottoleneの宣伝のために出版された料理書であるところが興味深いです。cottoleneとは綿実油と牛脂を混ぜた物で、現在はもう製造されていないんだそうですよ。



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2010.02.18

いつか晴れた日に(1995年)

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映画ではジョン・ダッシュウッドがロースト肉を切り分けます。

 ジェイン・オースティンブームってまだまだ続いてますよね。昔はまったく存在を知りませんでしたが、今ではブロンテ姉妹よりも多く関連書籍が出版されているのではないでしょうか。私も可能なかぎりジェイン・オースティンの映像化は全部見たいなあと思っているのですが、アン・リー監督の『いつか晴れた日に』が1811年に出版された『分別と多感』の映画化だとは全然知らなくて初めて見ました。エリノア役のエマ・トンプソンが自ら脚本を書いています。BBCテレビの三話構成のドラマ化はかなり原作に忠実でしたが、こちらは約2時間しかないのであらすじは同じでもセリフや小さなエピソードはほぼ全部変えてありました。


 


 日本でのジェイン・オースティンブームの一番大きなきっかけになったのはやっぱり『ブリジット・ジョーンズの日記』なのでしょうか? 私がはまったのは、NHKで深夜に再放送していたBBCテレビのドラマ化「エマ」「高慢と偏見」をたまたま見たのがきっかけでした。昔のイギリス人の恋バナがダラダラ続いて結婚するだけの話なのに妙に面白くて、原作を読んだらさらにはまりました。ちょうどそのTVドラマ「高慢と偏見」を富山の父も見ていて、嫁いで実家を出た姉にわざわざ電話して「うちのお母さんにそっくりのお母さんが出とって面白いから見られ」と嬉しそうに言ったらしいです。ベネット家の母といえば娘を玉の輿に乗せることにしか興味のない俗物で、ダーシーから思いっきり軽蔑される下品なオバサン……。お父さん、ひどい!


 


 映画の主人公はダッシュウッド家の長女エリノア(エマ・トンプソン)、次女マリアンヌ(ケイト・ウィンスレット)です。ダッシュウッド氏(トム・ウィルキンソン)を亡くした夫人(ジェマ・ジョーンズ)とエリノア、マリアンヌ、三女マーガレット(エミリー・フランソワ)は、腹違いの兄のジョン(ジェームズ・フリート)と妻のファニー(ハリエット・ウォルター)がサセックス州のノーランド屋敷を受け継ぐことになったので、デヴォン州のバートン村のコテッジに引越すことになります。エリノアはファニーの弟のエドワード(ヒュー・グラント)への思いを残したまま新居へ、マリアンヌはバートンでブランドン大佐(アラン・リックマン)に思いを寄せられるのですが、ウィロビー(グレッグ・ワイズ)と恋仲になります。ところがエドワードはまったくバートンに現れず、ウィロビーはロンドンへ帰ったまま音信不通になってしまい……という話です。『ラブ・アクチュアリー』『ハリー・ポッター』『ブリジット・ジョーンズの日記』などでおなじみの俳優がいっぱい出てます。


 


 食物史家のマギー・ブラックと、オースティン研究家のディアドル・フェイが著した『ジェイン・オースティン料理読本』(晶文社)なんて楽しい本もあるのですが、原作の『分別と多感』にはあまり食べ物が出てきません。ハム、チキン、ワイン、あんずのマーマレード、サケ、タラ、鳥肉の蒸し煮、子牛のカツレツ、ラヴェンダー水、干しサクランボ、桑の実、羊の肩肉、年代物の極上のコンスタンシア・ワイン(南アフリカのケープタウン付近産のデザート・ワイン)、コーヒー、コールド・ビーフ、黒ビール、という言葉がチラッと出てくるくらいです。


 


 しかし食卓の描写に定評のあるアン・リー監督による映像化だけあって、映画には食事シーンがいっぱい追加されてました。最初の食事シーン、ノーランド屋敷を継ぐためにやってきた腹違いの兄ジョンとその妻ファニーとダッシュウッド家の人々が囲むディナーからしてもう興味深いです。ここでジョンはローストした肉を切り分けています。日本人からするとへええと思うのですが、当時、肉を切り分けるのは家長の役割だったらしいですね。ジェイン・オースティンが1814年に発表した『マンスフィールド・パーク』にも、マンティグアに行った父親の代わりに息子が肉を切り分ける話がありました。父亡き後、家長がジョンとなり、本格的にノーランド屋敷がのっとられることが印象付けられるわけです。また、テーブルの上に魚の頭があってギョッとするのですが、『ジェイン・オースティン料理読本』を読んでいると、「たいてい食卓の一方の端にはサーモンがあり、バランスをとるためにもう一方の端には、周囲にワカサギを飾ったヨーロッパ産のカレイがありました」のだそうです。エドワードがノーランド屋敷にやってきた後のディナーシーンでも、魚の頭が二つ食卓に並べてあります。そういえば下で紹介している料理書にはどれも「Cod's Head」(タラの頭)という料理のレシピが載っていました。


 


 欧米映画にはローストビーフがよく出てきますが、この時代はどのように作られていたのでしょうか。ジェイン・オースティン(1775~1817年)と同時代の料理書、エリザベス・ラッフォールド著『The Experienced English Housekeeper』(1769年)、ハンナ・グラス著『The Art of Cookery, Made Plain and Easy』(1774年)、ジョン・ファーレイ著『The London Art of Cookery』(1811年)、マライア・ランデル著『A New System of Domestic Cookery』(1807年)などを調べてみました。ちなみに、この四冊は『ジェイン・オースティン料理読本』でも引用されています。

 四冊のレシピの基本はだいたい同じでした。肉汁を受ける鍋に少しの塩と水を入れて、その汁をかけながら肉を焼きます。肉を紙で包めと書いてあるものもあります。肉に火が通ったら紙を外し、また汁をかけて小麦粉を振りかけ、バターを塗ったりして、焼き色を付けます。そして「煙が火のほうになびくのが見えたら、肉に充分に火が通ったしるし」なんだそうです。この表現が四冊中三冊に書いてありました。オーブンではなく直火で焼いていた時代ならではのコツなんでしょうか? ちなみにホースラディッシュ以外の何ものも添えちゃダメと書いているものもありました。私はシンプルに牛肉に塩をふりかけてオーブンで焼き、グレイヴィソースを作って食べました。近所の肉屋さんに相談して上質の国産牛を安く売ってもらい、教えてもらった通りの方向に切って食べたら、衝撃的な美味しさでした!


 

 


 ノーランド屋敷では朝食シーンもあります。銀の鉢に入っているジャムを、小さなパンっぽいものに塗りたくって食べていて美味しそうです。イギリスだしスコーン? と安直に思ったのですが、ローストビーフのレシピを調べた料理書に出てくるのはマフィンやオーツケーキ、白パン、フレンチブレッドなどで、スコーンは出てきません。スコーンが流行るのはもうちょっと後の時代のようです。



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 バートン村のサー・ジョン(ロバート・ハーディ)の屋敷での軽食シーンも楽しいです。サクランボやあんず、桃と思われる新鮮な果物、砂糖漬の果物、パイ、ワインなどの鮮やかな色彩がきれいでした。また、野外の軽食シーンもありました。大きな腿肉のロースト、ポークパイ、茶色や白色のゼリーが所狭しとテーブルに並ぶだけでなく、後ろの日陰に高く盛られているのはアイスクリーム?

 と、いろいろ目移りして楽しい映画なのですが、やはりエマ・トンプソンがもうちょっと初々しかったら、もっと面白かったんじゃないかなあと思っちゃいます。そこが残念!


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2009.12.28

ミックス・ナッツ(1994年)

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映画では赤い缶に入ったままだったフルーツケーキ。

 今年こそはケーキを焼いたりご馳走を作ったりクリスマスイブを楽しむつもりだったのですが、なんだかんだと毎年と変わらず晩飯すら落ち着いて食べられないパッとしないクリスマスでした。せめてということで鑑賞してたのがノーラ・エフロンが1994年に撮ったクリスマス映画です。最初から最後まで狂騒的でバカみたいなコメディ映画です。でも嫌いになれない一本です。エフロン作品には『ジュリー&ジュリア』『めぐり逢えたら』『恋人たちの予感』など電話がよく出てきますが、この映画はスティーブ・マーティン演じる主人公の仕事が「自殺防止の電話相談ボランティア」なので、電話ネタが断然濃いです。オリジナルは『サンタクロースはゲス野郎』というフランス映画なのだそうです。

 ちなみに過去の日記では『やわらかい手』『おくりびと』『僕の彼女はどこ?』『悲しみは空の彼方に』『天が許し給うすべて』『イースタン・プロミス』『ルートヴィヒ』などにクリスマスツリーが出てきます。


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ミックス・ナッツ イブに逢えたら [VHS]


 主人公のフィリップ(スティーブ・マーティン)はマンチニク夫人(マデリン・カーン)、キャサリン(リタ・ウィルソン)と電話相談ボランティア団体「命の電話」で働いています。フィリップは恋人のスーザン(ジョエリー・フィッシャー)と別れたばかりで、キャサリンは今年も恋人ができず、それぞれ静かなクリスマスを過ごすはずでした。ところが高級マンションへの建替えを計画している大家のスタンリー(ギャリー・シャンドリング)が「命の電話」の立ち退きを命じます。フィリップたちが困っているところへさらに、夫に愛想をつかした妊婦のグレイシー(ジュリエット・ルイス)、その夫で自称壁画家のフィリックス(アンソニー・ラパーリア)、頭のトロいユダヤ教徒のルイ(アダム・サンドラー)、巨漢のオカマのクリス(リーヴ・シュレイバー)が加わってクリスマスがメチャクチャになる……という話です。

 やしの木が茂り、白い砂浜がひろがり、青い海の向こうに水平線が見えるカリフォルニアのベニスビーチをスティーヴ・マーティンが自転車で走り抜け、The Driftersの能天気な「White Christmas」が流れる、というオープニングからニヤニヤしてしまいます。そして彼の自転車の荷台に乗っているのが、人々の間を巡って重要な役割を果たすフルーツケーキです。しかしフルーツケーキはずっと赤い缶に入ったままで最後までその中身は見せない、というのが面白かったです。



 さえない人たちが大騒ぎした挙句、なんとなくいいクリスマスを迎えるという映画なので、パッとしないクリスマスを過ごす私にはピッタリでした。でも、この人たちは少なくとも2人殺しているので本当にひどい話です。さえない人たちを演じる俳優陣はみなさん素晴らしいのですが、中でも特にリタ・ウィルソンが印象的で、棒のように痩せてて動作が鈍臭く、いかにもモテなさそうでありながら妙に可愛い人でした。こういう女性、日本にもいっぱいいると思うのですが日本の映画やテレビではなかなか見かけません。この人と結婚したトム・ハンクスはさすがだと思います。



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 ドタバタのクリスマスをさらに盛り上げるのが、町や部屋の可愛い飾りと、食べ物でした。ジュリエット・ルイスはおなじみ行儀の悪い可愛い女の子の役で、牛乳を水筒に入れていつでもどこでもストローでチューチュー吸い、ピーナッツバターの瓶に指をつっこんで舐め、銃で撃たれそうになっても殺人犯にさせられそうになっても何か食べてました。そしてこの映画のクリスマスディナーは、なぜかテイクアウトの中華料理……。チェストナッツ入りのチャーメン(「ひしの実入りの焼きそば」と訳されていた)、おみくじクッキー、スペアリブなどをみんなで食べてました。

 キリスト教徒にとってクリスマス前の4週間は、キリストの降誕を待ち望む「待降節」というのだそうです。待降節の間、信者は肉や卵を断って魚介類以外のたんぱく質を摂取しません。娯楽も慎しみ、クリスマスイブまではひたすら祈り続けるのだそうです。そして12月25日以降は晴れて降誕祭となり、私たちがよく知っている、ご馳走を食べてみんなでお祝いをするクリスマスになるわけです。そんな精進の時期にも、中世の昔から食べることを許されていたのが「スパイスやドライフルーツ入りの菓子」なのだそうです。この『ミックス・ナッツ』のようなクリスマスシーズンの映画に、フルーツケーキやシュトレンやジンジャーブレッドが出てくるのは、そういう習慣に関係あるのでしょうか。



 というわけで映画の中で活躍していたフルーツケーキをわが家でも真夜中に焼きました。レシピは今まで作ったいろんなケーキのゴチャ混ぜアレンジです。

cake フルーツケーキ

【材料】
・バター 80g
・サワークリーム 50g
・小麦粉 130g
・砂糖 80g
・卵 1個
・ドライフルーツ(レーズン、レモンピールなど) 120g
・アーモンドパウダー 15g
・ベーキングパウダー 小さじ1
・塩 小さじ1/4
・バニラオイル 少々
・レモン汁 小さじ1

【作り方】
・レーズンなどは一ヶ月前くらいからラム酒などに漬けておく
・バターと卵を室温にもどす
・薄力粉とベーキングパウダーをふるっておく
・オーブンを180℃に余熱しておく
・ボウルにバターを入れて白っぽくなるまで泡だて器で混ぜる
・砂糖と塩を加えて混ぜる
・サワークリーム、レモン汁を加えて混ぜる
・薄力粉とベーキングパウダーの半分を加え、溶き卵の半分を加えて混ぜ、よく混ざったら残りの薄力粉、卵を混ぜる
・バニラオイルを入れ、ゴムべらで混ぜる
・ドライフルーツを入れて混ぜる
・180℃で50~60分焼く
・型から取り出して冷めるまで置いておき、乾かないようにサランラップで包んで一晩置く


Fruitscake06
黒豆ケーキではないです。


 映画の最後は私の大好きなドクター・ジョンが歌う「Mixed Nuts」という曲で締めくくられました。いつものピアノ、そしてニューオリンズとクリスマスソングをミックスしたサウンド、歌詞もどうやらクリスマスっぽい楽しいことを歌っているようです(作詞作曲はブロック・ウォルシュ)。ドクター・ジョンはアルバムをやたらいっぱい出しているので全部は把握できてないのですが、この映画のために歌われたものなのでしょうかね。


 



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2009.11.30

エリザベス(1998年)

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フルーツと砂糖の代わりにドライトマトでごまかしたミートパイ。

 『女王エリザベス』に続き、王室映画シリーズです。エリザベス1世がワイアットの乱への加担を疑われてロンドン塔で取り調べを受ける1554年から、1558年の戴冠式、そして1572年のリドルフィの陰謀の失敗までを描いた映画です。21~39歳のエリザベス1世を演じたケイト・ブランシェットは当時29歳です。



 ふと思ったのですが、なんだか16世紀男子を演じると、みんなEXILEっぽくなりませんか? この映画でレスター伯を演じたジョセフ・ファインズ、アンジュー公を演じたヴァンサン・カッセル、ノーフォーク公を演じたクリストファー・エクルストン、『エリザベス・ゴールデンエイジ』でウォルター・ローリーを演じたクライヴ・オーウェン、『女王エリザベス』でエセックス伯を演じたエロール・フリン、ウォルター・ローリーを演じたヴィンセント・プライスなど、みんなあの14人に混じってても違和感ないような気がします。でもEXILEのみなさんはとってもかっこいいのですが、残念ながら私の好みじゃないんですよね。

 そんな16世紀男子の中、ヘレン・ミレンがエリザベス1世を演じたイギリスのTVドラマ「エリザベス1世 ~愛と陰謀の王宮~」のレスター伯役のジェレミー・アイアンズと、エセックス伯役のヒュー・ダンシーは好みでした。『ミスト』でスーパーの副店長、オリーを演じたトビー・ジョーンズのロバート・セシル役も、ピーター・ローレっぽくてよかったです。


 


 食べ物は晩餐会シーン、エリザベスの食事シーンなどに出てきました。この時代のイギリスはナイフ、時折スプーンが使われるくらいで、基本は手で食事をしていたそうです。映画にもフォークは出てきません。

 1508年に出版されたウィンキン・ド・ウォード著『The Boke of Keruynge』(The Book of Carving:肉の切り方の本)にも、「ナイフは必ず2本の指と親指だけで持って、左手で肉を押さえる」というマナーが書いてありました。石井美樹子著『中世の食卓から』(ちくま文庫)にも、トマス・コリヤットというイギリス人がヴェネツィアを旅して、1611年に『Crudities』という旅行記を出版し、イタリア人が指を使わないでフォークで物を食べることに驚きつつも真似したい習慣だと記していることが紹介されています。


 


 しかしこの『エリザベス』では手掴みの食事は撮られてないです。エリザベスは簾の向こうでスプーンで何かを食べていたし、スコットランドでのメアリー・ド・ギーズ(ファニー・アルダン)とアンジュー公の食事もスプーンでごまかしていました。

 まず晩餐会そのものがイングランドの宮廷で行われるようになったのも、この時代からなのだそうです。1598年には、晩餐会の服装やマナーや一般的なベネチアの料理などついて書かれた、ジョバンニ・ド・ロッセリ著『Epulario』(『Italian Banquet』)が英訳されているらしいです。

 『エリザベス』のテーブルの上に並んでいるものをチェックすると、まずリンゴやザクロ、葡萄、イチジクっぽい果物がたくさん。ローストしたような大きな肉、チーズらしきもの、パン。そしてパイらしきものが気になります。確かに16世紀の料理書を見ているとパイやタルトがよく登場します。

 1557年に出版された『Proper Newe Booke of Cokerye』にもパイの作り方がいっぱい出てます。こちらは著者は不明で、カンタベリーの大司教であるマシュー・パーカーとその妻のマーガレット・パーカーの持ち物だったとされているそうです。その中に書かれているパイの作り方は以下の通りです。

riceball 『Proper Newe Booke of Cokerye』のパイの作り方

パイの羊肉や牛肉はよく挽いて塩コショウでしっかり味付けし、少量のサフランで色を付ける。適量の脂と骨髄、少量のヴィネガー、プラム、大量のレーズン、デーツ(ナツメヤシ)、脂の多い牛のブイヨンを混ぜる。最高のパイ皮にしたいなら、バターと溶き卵を入れて、小麦粉をよくこねて生地を作る。

 肉と酢、そしてフルーツ類……。真似して作る勇気は私にはありません! この本には他に青リンゴのパイの作り方なども載ってました。こちらはリンゴをシナモンと生姜と砂糖で味付けしてパイ生地に入れてバターを乗せて焼く、というもので現在のレシピとほとんど同じです。ただアップルパイにもサフランを入れろと書いてあり、サフランが流行ってたことがわかります。


Parker
Proper Newe Booke of Cokerye


 1615年に出版されたジャーヴェス・マーカム著『The English Huswife』には、以下のようなニシンパイが紹介されていました。うわっ! ニシンのパイがこんなに甘い味付けでよいのでしょうか!

riceball 『The English Huswife』のニシンパイ

一晩水に漬けておいたニシンの塩漬けをさっと茹でる。皮を取り、背を切って骨を取り、身をきれいに洗ってパイ生地に並べる。種を取ったレーズン、皮をむいて小さくスライスした1、2個の梨を、ニシンの上に乗せる。さらにその上に、カラント、砂糖、シナモン、デーツ、甘いバターを乗せる。フタとなるパイ生地をかぶせて、頂点に穴を開ける。あとはいい色になるまで焼く。十分に焼けたら、オーブンから取り出しておく。その間に、ボルドー産の赤ワイン、酸味のある果汁を少々、砂糖、シナモン、そして甘いバターを混ぜて煮る。パイのフタに開けておいた穴から、その煮汁を注ぎ、パイをちょっと揺らして再びオーブンに戻して少しの間焼く。完成したらパイを盛り付ける。パイのフタは砂糖がけ状態になっていて、パイの側面は砂糖で飾られている。

 同じく『The English Huswife』で紹介されていた、「chewet pie」というミートパイの一種のレシピは以下の通りです。また肉と砂糖やドライフルーツを混ぜてパイのフィリングを作ってます。

riceball 『The English Huswife』のミートパイ

ローストした後に雄鶏と雛鳥の筋と羽を取り除く。そして皮をはぐ。その鳥肉を上質の羊肉の脂と一緒に細かく切って、クローブ、ナツメグ、シナモン、砂糖、塩で味付けする。それからレーズンとカラント、デーツ、オレンジピールをよく混ぜて、小さめのパイ生地に並べ、キャラウェイのコンフィッツを散らし、パイ生地でフタをして焼く。焼けたらフタを取って、味付けしてない仔牛の腰肉のローストを並べる。



 16世紀の肉のパイはドライフルーツ、果物そして砂糖で甘く味付けするようなのですが、私にはそれを作って食べる勇気がありませんでした! かといって『大いなる遺産』で作った肉とスパイスだけのポークパイも肉の存在感が重すぎて飽きてしまいます。そこで果物の代わりに自作のドライトマトを入れて肉のパイを作ってみました。酸味が効いてて意外と美味しく、ワインが飲みたくなりました。最近はあまり作り込まないシンプルなパイが主流と思われますが、16世紀そして17、18世紀はさらに、気合の入ったデコラティブなパイが流行っていたようです。大きめのパイの皮は厚くて固く、容器のように使われ、フタを開けて、その中身をスプーンですくって食べることが多かったようだと『The Boke of Keruynge』の注釈に書いてありました。


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粘土遊びのようにデコラティブに作ってみました。


 しかしケイト・ブランシェットの恐い顔、EXILEみたいな美丈夫、晒し首や拷問シーンまで揃えながら、「俺よりもどんどん出世して、高給取りになっていくキャリアウーマンと付き合うのって疲れるんだよ、マリコ」「わかったわ。私は私らしく自分の道を生きていくわ」みたいな1980年代後半から1990年代のTVドラマみたいな話でしたよ。



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2009.11.12

初恋のきた道(1999年)

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しめじ、椎茸入り、手作りきのこ餃子。

 今年の6月、餃子に凝っている友人宅の集いに参加して、餃子の作り方をちょっとだけ教えてもらいました。確かに餃子の皮は市販品より自分で作った方が美味しかったです。皮の伸ばし方のコツをなんとなく体得できたものの、その後、挑戦する機会がなかなかなかったのですが、とうとう作ってみました!
 
 映画の食べ物本というと、このチャン・イーモウ監督『初恋のきた道』に出てくるきのこ餃子が必ず掲載されていますよね。この作品は、映画のみならず原作(鮑十著『紀念』)も、映画とは違うかたちで食べ物がたくさん登場します。でも、この映画のチャン・ツィイーは可愛いすぎて、素朴な山の娘に見えなくて、ちょっとムカッ……!? ミスキャストと言いたくなるのは女の嫉妬でしょうか!


 


 映画は1998年ころから始まります。なぜならジェームズ・キャメロン監督『タイタニック』のポスターが壁に貼ってあるからです。父の急死の知らせを受けて故郷の黒竜江省三合屯に帰った息子が、父母が出会った1958年ころに思いを馳せるというお話です。回想シーンでは、都会からやってきた若き日の父、駱先生(ルオ・チャンユー)のために、葱のお焼き、栗ご飯と炒り卵、きのこ餃子をせっせと作る若き日の母、ディ(チャン・ツィイー)の姿が印象的に描かれます。



 実は原作は、村の学校を新しく建て直すために町までの長い道のりを歩く、晩年の駱先生の話がメインです。しかし、ディが作る料理が美味しそうなのは同じで、小麦粉をこねて円形にして焼いた餅(ビン)、ニラ玉炒め、山盛りのキュウリ、玉子入りのアワのお粥などが出てきます。ちなみに駱先生の好物は、映画ではきのこ餃子でしたが、原作ではニラ玉炒めでした。

 ディのけなげさ、教育にかける駱先生の情熱、美しい師弟愛にジーンとするのですが、中国の歴史を思うと、美しい回想シーンが重みを持って胸に迫ってきます。駱先生はディの作ったきのこ餃子を食べることなく町に連れ戻され、村人たちは「どういうことだ?」「右派だとか」と噂話をします。チェン・カイコー監督の『私の紅衛兵時代』(講談社現代新書)などを読むと、学校の食堂のメニューの文句を言っただけで右派と決め付けられ、その後、二十数年間も社会の底辺をさまよわなければならなかった友人の話が紹介されていたりして、1957年の反右派闘争の恐ろしさがわかります。駱先生もその抑圧を受けた一人なのでしょう。しかし大飢饉、文化大革命とさらに凄まじいことになる1960年代を思うと、1950年代はまさに「まだまし」という感じだったのではないでしょうか。『私の紅衛兵時代』に書かれた中国の1960年代の少年の話は涙なしには読めませんでした。


 


 張競著『中華料理の文化史』(ちくま新書)によると、現在の中国北部の主食は小麦粉なのだそうです。ディが作る餅(ビン)や餃子にも、土地柄が表れているのですね。張競先生はその本の中でお供え物について調べ、いつごろから北部では小麦粉が主食になったのかを探り、紀元前4世紀の少し前なのではないかと推理しています。



 この本によると、現代の中華料理は、歴代の料理書の中では『調鼎集』、袁牧著『随園食単』のレシピに近いので、18世紀の乾隆時代にはもう成立していたのではないかということでした。『調鼎集』は入手しにくいので、『随園食単』(岩波文庫、青木正兒訳)の餃子をチェックしてみました。



顚不稜。すなわち肉餃である。

麪粉(うどんこ)を糊状に溶いて、焼いて皮をこしらえ、肉餡を包んでこれを蒸す。その出来不出来は、全く餡の作り方いかんにあり、ただ肉を嫩(やわらか)くし、筋を去って調味料を加えさえすればよいのだ。私は広東に往ったおり、官(姓)鎮台(官名)のところの顚不稜を喫(た)べたが、甚だ佳(よ)かった。中には肉皮(かわ)を膏(あぶら)で煨(に)たのを用いて餡としてあったので、故に軟美に感じたのである。
 

 なぜ餃子を「顚不稜(ティエンプロン)」と呼んだのかについては、訳者の青木正兒が解説しています。半月形に由来があるのですが、そういう註釈も面白いので読んでみてください。しかし昔の餃子というのは、皮を焼いてから餡を入れて蒸すんですね。

 そして「餅」といってもいろいろあるんですね。張競先生の本で紹介している朝ご飯「芝麻焼餅」(小麦粉を発酵させ、細ねぎを入れて焼き上げた平たいパン)は、ドラム缶のような炉で焼くのだそうです。映画の中で「葱のお焼き」と訳されている餅は、小麦粉の生地に長葱を混ぜて、大きな中華鍋のようなもので焼いて、表面に茶色い汁を塗ってました。『随園食単』(岩波文庫)の焼餅は松の実とか胡桃とか氷砂糖が入っていて、炙くときは「両面鍋を用いて、上下に火を置かねばならぬ」のだそうです。

 ソニー・ピクチャーズのサイトに、ウー・ウェン先生が『初恋のきた道』を参考に料理を紹介したページがまだ残っていたので、このレシピと、我が家のレシピと、友人宅で習ったレシピをミックスして、きのこ餃子を作りました。

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皮から作ったのは初めてです。



《江別製粉・強力粉》はるゆたか(ブレンド) 5kg



鎮江香醋(中国黒酢) 10P26Oct09

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2009.07.13

ジェイン・エア(1996年)

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ヘレンがくれたチーズのせパン。

 今、日本でソフト化されている『ジェイン・エア』の映画は1944年版と、この1996年版だけではないでしょうか。ジェイン・エア役はシャルロット・ゲンズブール。ロチェスター役はウィリアム・ハート。監督はフランコ・ゼフィレッリです。


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 こちらもずいぶん原作を端折ってますが、前半は1944年版より原作の要素をうまく抽出しているように感じました。会話の面白さや知性に発揮されたジェインの個性を、こちらの1996年版はちゃんと描いているのが嬉しいです。しかし前半が比較的丁寧な分、後半が急転直下です。原作を約2時間に収めようとすること自体に無理があるのはわかっているのですが、「ソーンフィールド荘ってどれくらいの大きさ?」とか「ロチェスター氏ってどれくらいの金持ち?」とか「どんな服装だったの?」などを、イギリスの人が考証して映像化したもので見られるのはやっぱり面白いです。

 ソーンフィールド荘の中は意外と詳しく再現されていたのですが、食べ物はほとんど出てきませんでした。唯一見ることができたのはローウッド学院に到着した日の夜にベッドの中でジェインがヘレンから渡されるパンとチーズだけです。原作では、朝食のお粥(ポリッジ)が焦げてあまりにまずそうだったため食べられなかった生徒たちに、優しいテンプル先生が与えたのがチーズつきパンでした。1944年版もこの1996年も登場するのは貧乏ご飯ばっかりですね。しかし確かに原作も料理の話が出てくるのは、ジェインが孤独でひもじいときばかりでした。



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 そして、シャルロット・ゲンズブールってやはりいいですね。私としては、この映画はそれに尽きます。正統派美人とは言い難い容姿なのに、やはり可愛いです。ロチェスター氏に見初められるのも納得の可愛さです。暗くて内気なジェインを演じつつ、知的で堂々としてて、笑顔が可愛く初々しいです。シャルロットを見てるだけで時間が経って映画が終わってしまいました。ロチェスター役のウィリアム・ハートは背が高くてシャルロットが小さく見えるところはよかったですが、気になったのは老けすぎ?ということです。


 


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