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2009.12.14

母なる証明(2009年)

Saamugetan05
高麗人参、栗、ナツメ、餅米が入っている参鶏湯。

 もうポン・ジュノについては理屈抜きで好き、偏愛していると言うしかないです。たとえ他にいっぱい高尚な映画や良質な映画があるよと言われたって、身体にジュワッと沁み込んでくるのはポン・ジュノ汁です。「私たちの監督!」って感じがします。最新作も期待を裏切られることなく面白かったです。今回もしっかり飛び蹴りシーンが出てきたし、爆笑しつつハラハラしつつ、悲しみと感動で胸がいっぱいになって映画館から帰ってきました。オバサン感、“昭和感”たっぷり、ムード歌謡のような哀愁のある音楽もよかったです。


 

 
 映画の主人公は、知能の発達が遅れている青年トジュン(ウォンビン)と漢方薬店で働く母(キム・ヘジャ)、二人きりで暮らす母子です。母に守られて平和に暮らしていたトジュンがある日、女子高生殺人事件の犯人として逮捕されてしまいます。純粋無垢なトジュンの無実を信じる母はひとりきりで捜査を始め、真犯人を探し出そうとするのですが……という話です。

 という、あらすじを聞くと、TVのサスペンスドラマにだってよくある話と思うかもしれませんが、金色のススキの原っぱで紫色の服のオバサンが……!というオープニングからビックリそして美しく、その後は129分間もう釘付けでした。

 ウォンビンは『ギルバート・グレイプ』のレオナルド・ディカプリオに勝るとも劣らない名演と言えるのではないでしょうか。兵役を終えて5年ぶりの芸能界復帰の仕事にこの役を選ぶなんて、ハンサムなだけじゃなくてガッツのある俳優です!

 母親役のキム・ヘジャは、私が仕事のために韓国TVドラマを死ぬほど見なければならないときに鑑賞した「宮 ~Love in Palace~」で知っていた女優でした。「宮」は、もし韓国の皇室が現代にも存続していたらという設定のラブコメで、家族の借金のために皇太子の許婚となったドジで平凡な主人公を見守る優しい皇太后役をキム・ヘジャが演じていました。しかし、映画が始まるまで、あの皇太后様が主役とはまったく気付きませんでした。思い返せば「宮」でもキム・ヘジャは品があって可愛らしく、かつ大胆な演技も辞さない女優という片鱗があったように思います。


 

 
 韓国映画と言えば食べ物の描写が面白いことが多いです。この映画にも田舎町を舞台に食べ物がいっぱい登場しました。母親が聞き込み捜査をする高校生たちが食べる屋台のおでん。被害者のおばあさんが飲みまくっているマッコルリ。トジュンが行くスナック「マンハッタン」のテーブルに並ぶ料理。軽薄な弁護士が料理を皿に取りつつ立ったまま食べるバイキング。廃棄物処理業者のオジサンが作ってくれるちょっと不潔っぽいホットレモンドリンク。友人のジンテ(チン・グ)とミナがトジュンの出所祝いに贈る豆腐ケーキ。

 そして過去のポン・ジュノ作品といえば『吠える犬はかまない』の胡桃、『殺人の追憶』の炸醤麺、『グエムル~漢江の怪物~』のキンパなど、それぞれに登場人物を特徴づける食べ物が出てきましたが、『母なる証明』で記憶に残る食べ物というと、警察の取り調べから帰ってきたトジュンに母が食べさせる参鶏湯です。「警察から帰ってきたら精力のつく物を食べなければならない」とオバサンならではの理屈を言い、ツルニンジンやクコの実や栗も入っていると盛んに薦め、食べやすいようにほぐして息子の皿に肉をドンドン並べる母。参鶏湯で描かれる押し付けがましくパワフルな母親像は、日本人にもよくわかるのではないでしょうか。


 

 


 私にはまだ鶏のお尻の穴に手を突っ込む根性がないので、輸入食材屋などで1,000円くらいで売っている参鶏湯のパックをよく利用してます。今回は残念ながらパックを開けたときから詰め物が飛び出している状態でしたが、餅米、高麗人参、栗、ナツメが入っていて美味しいです。2010年の抱負は丸鶏の尻の穴に手を入れる勇気を持つことです!



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 そんなマザコン映画、面白いの?と思うかもしれませんが、自分の息子が可愛いだけの盲目的で狂気めいた母の愛を描く、よくある映画とはちょっと違っているのです。主役以外に目を向けてみると、実は主要人物のほとんどに母や子がいません。被害者の少女は祖母と二人暮しだし、ジンテはひとりぽっちでボロボロの小屋みたいな家に住んでいるし、ミナの母は商売に忙しく娘の素行不良に気付いてないし、ジェムン刑事(ユン・ジェムン)もトジュンの母に世話になった過去があるようだし、新たな容疑者の男の子には親がいません。さらに母親の友人のミソンは不妊に悩んでいて、事件の鍵を握る廃棄物処理業の老人はひとりぼっちでゴミの中で暮らしています。映画は全編、監督とトジュンの母が自分の子にも他人の子にも注ぐ憐れみで満ちていて、その中で、母が自分にしかできない息子を守る選択を重ねていくところがたまらないのでした。



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