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2010.02.18

いつか晴れた日に(1995年)

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映画ではジョン・ダッシュウッドがロースト肉を切り分けます。

 ジェイン・オースティンブームってまだまだ続いてますよね。昔はまったく存在を知りませんでしたが、今ではブロンテ姉妹よりも多く関連書籍が出版されているのではないでしょうか。私も可能なかぎりジェイン・オースティンの映像化は全部見たいなあと思っているのですが、アン・リー監督の『いつか晴れた日に』が1811年に出版された『分別と多感』の映画化だとは全然知らなくて初めて見ました。エリノア役のエマ・トンプソンが自ら脚本を書いています。BBCテレビの三話構成のドラマ化はかなり原作に忠実でしたが、こちらは約2時間しかないのであらすじは同じでもセリフや小さなエピソードはほぼ全部変えてありました。


 


 日本でのジェイン・オースティンブームの一番大きなきっかけになったのはやっぱり『ブリジット・ジョーンズの日記』なのでしょうか? 私がはまったのは、NHKで深夜に再放送していたBBCテレビのドラマ化「エマ」「高慢と偏見」をたまたま見たのがきっかけでした。昔のイギリス人の恋バナがダラダラ続いて結婚するだけの話なのに妙に面白くて、原作を読んだらさらにはまりました。ちょうどそのTVドラマ「高慢と偏見」を富山の父も見ていて、嫁いで実家を出た姉にわざわざ電話して「うちのお母さんにそっくりのお母さんが出とって面白いから見られ」と嬉しそうに言ったらしいです。ベネット家の母といえば娘を玉の輿に乗せることにしか興味のない俗物で、ダーシーから思いっきり軽蔑される下品なオバサン……。お父さん、ひどい!


 


 映画の主人公はダッシュウッド家の長女エリノア(エマ・トンプソン)、次女マリアンヌ(ケイト・ウィンスレット)です。ダッシュウッド氏(トム・ウィルキンソン)を亡くした夫人(ジェマ・ジョーンズ)とエリノア、マリアンヌ、三女マーガレット(エミリー・フランソワ)は、腹違いの兄のジョン(ジェームズ・フリート)と妻のファニー(ハリエット・ウォルター)がサセックス州のノーランド屋敷を受け継ぐことになったので、デヴォン州のバートン村のコテッジに引越すことになります。エリノアはファニーの弟のエドワード(ヒュー・グラント)への思いを残したまま新居へ、マリアンヌはバートンでブランドン大佐(アラン・リックマン)に思いを寄せられるのですが、ウィロビー(グレッグ・ワイズ)と恋仲になります。ところがエドワードはまったくバートンに現れず、ウィロビーはロンドンへ帰ったまま音信不通になってしまい……という話です。『ラブ・アクチュアリー』『ハリー・ポッター』『ブリジット・ジョーンズの日記』などでおなじみの俳優がいっぱい出てます。


 


 食物史家のマギー・ブラックと、オースティン研究家のディアドル・フェイが著した『ジェイン・オースティン料理読本』(晶文社)なんて楽しい本もあるのですが、原作の『分別と多感』にはあまり食べ物が出てきません。ハム、チキン、ワイン、あんずのマーマレード、サケ、タラ、鳥肉の蒸し煮、子牛のカツレツ、ラヴェンダー水、干しサクランボ、桑の実、羊の肩肉、年代物の極上のコンスタンシア・ワイン(南アフリカのケープタウン付近産のデザート・ワイン)、コーヒー、コールド・ビーフ、黒ビール、という言葉がチラッと出てくるくらいです。


 


 しかし食卓の描写に定評のあるアン・リー監督による映像化だけあって、映画には食事シーンがいっぱい追加されてました。最初の食事シーン、ノーランド屋敷を継ぐためにやってきた腹違いの兄ジョンとその妻ファニーとダッシュウッド家の人々が囲むディナーからしてもう興味深いです。ここでジョンはローストした肉を切り分けています。日本人からするとへええと思うのですが、当時、肉を切り分けるのは家長の役割だったらしいですね。ジェイン・オースティンが1814年に発表した『マンスフィールド・パーク』にも、マンティグアに行った父親の代わりに息子が肉を切り分ける話がありました。父亡き後、家長がジョンとなり、本格的にノーランド屋敷がのっとられることが印象付けられるわけです。また、テーブルの上に魚の頭があってギョッとするのですが、『ジェイン・オースティン料理読本』を読んでいると、「たいてい食卓の一方の端にはサーモンがあり、バランスをとるためにもう一方の端には、周囲にワカサギを飾ったヨーロッパ産のカレイがありました」のだそうです。エドワードがノーランド屋敷にやってきた後のディナーシーンでも、魚の頭が二つ食卓に並べてあります。そういえば下で紹介している料理書にはどれも「Cod's Head」(タラの頭)という料理のレシピが載っていました。


 


 欧米映画にはローストビーフがよく出てきますが、この時代はどのように作られていたのでしょうか。ジェイン・オースティン(1775~1817年)と同時代の料理書、エリザベス・ラッフォールド著『The Experienced English Housekeeper』(1769年)、ハンナ・グラス著『The Art of Cookery, Made Plain and Easy』(1774年)、ジョン・ファーレイ著『The London Art of Cookery』(1811年)、マライア・ランデル著『A New System of Domestic Cookery』(1807年)などを調べてみました。ちなみに、この四冊は『ジェイン・オースティン料理読本』でも引用されています。

 四冊のレシピの基本はだいたい同じでした。肉汁を受ける鍋に少しの塩と水を入れて、その汁をかけながら肉を焼きます。肉を紙で包めと書いてあるものもあります。肉に火が通ったら紙を外し、また汁をかけて小麦粉を振りかけ、バターを塗ったりして、焼き色を付けます。そして「煙が火のほうになびくのが見えたら、肉に充分に火が通ったしるし」なんだそうです。この表現が四冊中三冊に書いてありました。オーブンではなく直火で焼いていた時代ならではのコツなんでしょうか? ちなみにホースラディッシュ以外の何ものも添えちゃダメと書いているものもありました。私はシンプルに牛肉に塩をふりかけてオーブンで焼き、グレイヴィソースを作って食べました。近所の肉屋さんに相談して上質の国産牛を安く売ってもらい、教えてもらった通りの方向に切って食べたら、衝撃的な美味しさでした!


 

 


 ノーランド屋敷では朝食シーンもあります。銀の鉢に入っているジャムを、小さなパンっぽいものに塗りたくって食べていて美味しそうです。イギリスだしスコーン? と安直に思ったのですが、ローストビーフのレシピを調べた料理書に出てくるのはマフィンやオーツケーキ、白パン、フレンチブレッドなどで、スコーンは出てきません。スコーンが流行るのはもうちょっと後の時代のようです。



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 バートン村のサー・ジョン(ロバート・ハーディ)の屋敷での軽食シーンも楽しいです。サクランボやあんず、桃と思われる新鮮な果物、砂糖漬の果物、パイ、ワインなどの鮮やかな色彩がきれいでした。また、野外の軽食シーンもありました。大きな腿肉のロースト、ポークパイ、茶色や白色のゼリーが所狭しとテーブルに並ぶだけでなく、後ろの日陰に高く盛られているのはアイスクリーム?

 と、いろいろ目移りして楽しい映画なのですが、やはりエマ・トンプソンがもうちょっと初々しかったら、もっと面白かったんじゃないかなあと思っちゃいます。そこが残念!


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