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2010.02.22

ノッティングヒルの恋人(1999年)

Brownie11
ブラウニーはアメリカのお菓子。

 こんな人気作品をTVで切れ切れでしか見たことがなかったので、『いつか晴れた日に』でヒュー・グラントを見たついでに改めてちゃんと見ました。

 ヒュー・グラントが演じる主人公のウィリアム・タッカーは、ちょっと『いつか晴れた日に』のエドワード的な人物かもしれません。監督のロジャー・ミッチェルは1818年に出版されたジェイン・オースティン著『説得』をドラマ化している人だし(BBCテレビ「待ち焦がれて」)、脚本のリチャード・カーティスは『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズの脚本も書いている人だし、ジェイン・オースティン的なテイストもちょっと意識して作られたラブコメなのでしょうか? 19世紀のイギリスのような貴族の男とジェントリの娘などという身分の差は描けないから、さえない旅行専門書店主のウィリアム・タッカー(ヒュー・グラント)とハリウッド女優のアナ・スコット(ジュリア・ロバーツ)という格差を作ってみましたということなんでしょうかね。映画の中には、アナのセリフの練習に付き合うウィリアムが「おもしろいよ。ジェイン・オースティンやヘンリー・ジェイムスじゃないけどね」というシーンもあります。

 しかし残念ながら私には「きれい」以外のアナ・スコットの魅力がよくわかりませんでした。これ、英語がわかる人なら会話ににじみ出る彼女のユーモアや機知がわかって、もっとこの恋愛映画に入り込めるのでしょうかね。



 この映画を見てつくづく思ったのは、エルビス・コステロが歌う主題曲「She」を自分の結婚式の入場曲に選んだ藤原紀香ってすごいねーっ!ということです。いや、ファンなんですけどね。うちには母が姉と私に「見習いなさい!」と言って送りつけてきた『紀香バディ!』(講談社)があります。どうせなら『紀香バディ!2 リ・ア・ル』も送ってほしい。「She」はもともとはシャルル・アズナブールが作曲して歌ってます。


 


 この映画で印象的な食べ物といえば、アナが飛び入り参加したウィリアムの妹のバースディパーティのデザートにみんなで食べるブラウニーです。ウィリアムの友人のマックス(ティム・マッキナリー)が「アナ、君を見ていると俺たち英国人は成功にはほど遠いって思うよ」と言いながらブラウニーを食べるのですが、舞台はイギリスなのにブラウニーはアメリカの菓子なんですよね。そして最後に一個残ったブラウニーを一番みじめな人間が食べることができるというゲームが始まり、みんな自分がいかに悲惨な人生を歩んでいるかを語り始めます。

 ブラウニーのオリジナルレシピを求めて、まず本間千枝子さんが『アメリカの食卓』(文春文庫)の中で「アメリカで一八九六年以来料理書のバイブルといわれて版を重ねてきた」と紹介した、ファニー・ファーマー著『Boston Cooking School Cook Book』初版(1896年)を調べてみました。ちなみに『アメリカの食卓』には、『ジュリー&ジュリア』のジュリア・チャイルドの登場が長年アメリカで暮らす著者の目にどのように映ったのかを描いた文章も収録されています。映画を見た後にそれを読んで改めて、なぜそんなにも多くのアメリカ人がジュリア・チャイルドの料理と本と彼女自身を愛したのかがわかるような気がしました。

cake 『Boston Cooking School Cook Book』1896年版のブラウニー

【材料】
・バター 1/3カップ
・粉砂糖 1/3カップ
・溶き卵 1個
・グルテン麦粉 7/8カップ 
・プエルトリコの糖蜜 1/3カップ
・ペカンナッツ 1カップ

【作り方】
材料を混ぜ合わせる。小さい浅いケーキの型に入れて焼き、半分のペカンナッツは表面に飾る。

 あれ? チョコレートは? プエルトリコの糖蜜って!? と現在とずいぶん違うレシピにビックリします。ところが1906年版を見ると、上記のレシピとともに、以下のブラウニーのレシピも掲載されています。

cake 『Boston Cooking School Cook Book』1906年版に追加されたブラウニー

【材料】
(ts=4.92ml)
・砂糖 1カップ 
・溶かしバター 1/4カップ
・卵 1個
・製菓用チョコレート 2個
・バニラエッセンス 3/4ts
・小麦粉 1/2カップ
・くるみ 1/2カップ

【作り方】
材料を混ぜ合わせる。7インチの正方形の型にオーブンシートを敷く。混ぜた材料を型に流し込み、オーブンで焼く。オーブンから出すとすぐに紙を取り除き、鋭いナイフで細長く切る。この通りにやらなければ、紙がケーキにくっつき、細長く切ることができなくなるだろう。

 ホッ! こちらはほぼ現在のブラウニーのレシピと同じです。しかしバターが少なくて砂糖が多いのが気になります。


 


 1907年に出版されたマリア・ウィレット・ハワード著『Lowney’s Cook Book』にもブラウニーのレシピを2つ見つけました。こちらはボストンのThe Walter M. Lowney Co.という会社が出版した料理書で、表紙は「LOWNEY’S BREAKFAST COCOA」なんていう商品の広告になってます。

cake 『Lowney’s Cook Book』のバンガー・ブラウニー

【材料】
(ts=4.92ml)
・バター 1カップ
・製菓用チョコレート 3個
・ブラウンシュガー 1カップ
・小麦粉 1/2~3/4カップ
・卵 1個
・くるみ 1カップ
・塩 1/4ts

【作り方】
すべての材料をボウルに入れて、よく混ぜる。バターを塗った型に均等に流し込み、焼いて細長く切る。

 砂糖や小麦粉、卵の量に対して、バターとチョコレートが多いです。かなりネットリしているブラウニーと思われます。なぜバンガー(bangor)なんでしょうか!? もう一つ掲載されていたのは以下のレシピです。

cake 『Lowney’s Cook Book』のルーニーズブラウニー

【材料】
(ts=4.92ml)
・バター 1/2カップ
・卵 2個
・砂糖 1カップ
・くるみ 1/2カップ
・ルーニーズプレミアムチョコレート 2個
・小麦粉 1/2カップ
・塩 1/4ts

【作り方】
バターをクリーム状にして、残りの材料を加える。バターを塗ったシートに材料を混ぜ合わせた物をひろげて、10分~50分焼く。オーブンから出したらすぐに正方形に切る。

 こちらは自社製品「ルーニーズプレミアムチョコレート」の宣伝レシピですね。ルーニーズプレミアムチョコレートの量がわからないのですが、砂糖の量は多めとはいえ現在の味に近い穏当なレシピのように思われます。

 この後の時代の料理書ではブラウニーのレシピがポツポツと見つかります。しかしWoman's Institute of Domestic Arts and Sciences著『Woman’s Institute library of Cookery』(1921年)や、エリザベス・ヒラー著『52 Sunday Dinners A Book of Recipe』(1913年)には、チョコレートではなく糖蜜を使うレシピが載っているので、しばらくは糖蜜のブラウニーも作られていたと思われます。『52 Sunday Dinners A Book of Recipe』はバターやラードの代用物であるcottoleneの宣伝のために出版された料理書であるところが興味深いです。cottoleneとは綿実油と牛脂を混ぜた物で、現在はもう製造されていないんだそうですよ。



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コメント

初めまして。マリコさんtulipきょんと申します。
韓国のリアルブラウニーを食べていて、そこに書いてあるBostonCooking School cooking Bookのレシピに興味を持ち、ここに辿りつきました。
こちらに書いてあるレシピはマリコさんが、日本のカップ1C=200ccに換算し直されたものですか?それにしても製菓用チョコ2個って何グラムの物なんでしょうね。もちろんマリコさんは作ってみられた事があるんですよね?cake

投稿: きょん | 2012.02.18 10:07

はじめまして。コメントありがとうございます。韓国のリアルブラウニー、コンビニなどでもよく見かけますね。中に『BostonCooking School cooking Book』のことが書いてあるとは! 私も買ってチェックしてみます。「1cup」はオリジナルの料理本に書いてあったとおりなのですが、そうですよね……国によって1カップの量も違うんですよね。恥ずかしながら盲点でしたshock 自分のブラウニーは砂糖やチョコレートの量を変えてみたりして試行錯誤しておりますheart01

投稿: マリコ | 2012.02.19 11:55

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