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2010.05.04

人喰いアメーバの恐怖2(1971年)

Blob_brownie05
うちのブラウニーにはチョコレートと胡桃しか入ってません。

 子どものころに一番怖かったのは、幽霊でもゾンビでもサメでも殺人鬼でもなくアメーバだったなあ、とスカパーで放送された『ブロブ 宇宙からの不明物体』を見ながらボンヤリ思い出していたのですが、その恐怖の元凶と思われる映画のDVDが発売されたので見てみました。といっても実は、アメーバの色は赤いとか、最後はどこか広い空間でアメーバに追い詰められる展開だったなあとか、わずかな隙間からニョ~とトコロテンのようにアメーバが迫ってくる姿とか、ボンヤリした記憶しかないので、TVで見たあの映画が本当にこの『人喰いアメーバの恐怖2』なのかどうか確信はないのでした。『マックィーンの絶対の危機 人喰いアメーバの恐怖』かもしれないし……。



 大人になって鑑賞してみると、子どもの頃とは違う意味で怖かったです。監督作品はこれ一本という俳優のラリー・ハグマンが撮ったせいか、いびつでなんとも気持ち悪い映画なのです。音楽も映画の気持ち悪さを盛り上げてくれるのですが、作曲家はモート・ガーソンでした。『モンド・ミュージック』(リブロポート)や田中雄二著『電子音楽 in ジャパン』(アスキー出版局)などでもムーグ(古い人間なのでムーグと言ってしまう)のアルバムが紹介されていた人です。ジャケットのインパクトで言うと「Electronic Hair Pieces」などに見覚えのある人が多いのではないでしょうか。


 



Mortgarson
Electronic Hair Pieces


 マスタードの花が風に揺れる草原をネコちゃんが歩くオープニングでは、ブンチャブンチャと遊園地にでも流れそうな明るい曲がシンセサイザー(これもやっぱりムーグ?)で奏でられ、途中に「キャーッ」という叫び声がうっすら聞こえます。このシンセサイザーの音がキンキラで多幸感たっぷりすぎて、最初からなんだか気持ち悪いです。電波が歯に沁みるってこんな感じ? そんな経験はないけど。この子猫が後にアメーバの餌食になることは言うまでもありません。

 さらに気持ち悪いのが、アメーバ登場現場付近の山にキャンプにやって来たボーイスカウトの少年たちでした。みんなちょっと足りないように(?)見える男の子たちで、何故か、ずっとアメリカン・クラッカーを鳴らしているのです。モート・ガーソンの狂騒的な音楽に、しつこく重ねられるアメリカン・クラッカーのカチカチ音。やめてーっ! 



アメリカンクラッカー(クラッカーボール)


 参考までに下の本の表紙写真のオジサンがモート・ガーソンなんだそうです。



 『ブロブ 宇宙からの不明物体』では、アメーバは落ちてきた隕石のように登場しました。私はまだ改めて見てはいないのですが、一九五八年に撮られた『マックィーンの絶対の危機 人喰いアメーバの恐怖』でもアメーバは隕石のように登場するようです。そして、この『人喰いアメーバの恐怖2』では、アメーバは冷凍保存されていた頑丈な銀色の容器から漏れ出ます。これらの登場方法といい、建造物はそのままで生物だけが食べられて消えるというイメージといい、アメーバの恐怖って放射能の恐怖の隠喩なんでしょうか。


 


 アメーバが人を襲いはじめているころ、主人公のリサ(グウィン・ギルフォード)は、友だちのレスリー(キャロル・リンレイ)と一緒に、恋人のボビー(ロバート・ウォーカー・Jr.)のバースデーパーティの準備をしています。そこへギターを持ったジョン・レノン風の男(ランディ・ストーンヒル)と女(シンディ・ウィリアムズ)がやってきてリサにブラウニーを渡し、「ボビーへの誕生日プレゼントを忘れてきちゃった」と言います。英語のセリフが聞き取れなかったのですが、字幕の「ブラウニー」には傍点が付いていて、プレゼントを忘れたのはブラウニーが原因ね、とリサは笑います。最初はこのシーンの意味がわかりませんでした。そう、ブラウニーといえば、マリファナ入り菓子として映画やドラマに頻繁に登場することを忘れてはいけないのでした。

 そういえば『ノッティングヒルの恋人』のブラウニーもアメリカの菓子として登場しただけと思っていたのですが、みんなでブラウニーを食べながら、いつもは言えない自分の人生の悲惨ぶりを告白し合うなんて、ちょっと意味深な描写? もちろん、だからといってマックスの焼くブラウニーにマリファナが入っていたわけではないと思いますが……。

 アメーバの被害が拡大する一方で、リサたちが危険を訴えても、保安官(リチャード・ウェッブ)をはじめとする大人たちは、またドラッグをやって幻でも見たんだろうと聞く耳を持ちません。エコロジーを意識したセリフがちりばめられ、若者たちはマリファナをスパスパ、ヒッピーなんか嫌いだとぼやくホーボーのオジサンはアメーバに襲われ、ランディ・ストーンヒルは「コカインがきれた~♪ どこへ買いに行けばいいの~♪」みたいな唄を歌い、キャロル・リンレイはなにかオブジェを作って芸術活動にいそしんでいます。単なるパニック映画ではなく、ヒッピーの時代ならではの映画でもあったとは、子どもの頃はまったく理解できてませんでした。

 二十世紀に入ってから、特に一九二〇年代以降のアメリカの料理書にブラウニーは定番菓子としてよく登場します。たくさんの料理書を見た結果、一九二〇年代に最も多いレシピは以下の通りでした。チョコレートは少なめ、砂糖はかなり多めです。

cake 一九二〇年代のブラウニー

【材料】
・チョコレート 60g
・バター 90g
・砂糖 170g
・卵 2個
・薄力粉 52.5g
・くるみ 1カップ

【作り方】
・チョコレートとバターを溶かして混ぜておく
・卵と砂糖を混ぜて、溶かしておいたチョコレートとバターを混ぜる
・ふるいにかけた薄力粉を加えて混ぜる
・型に流し入れ、余熱しておいた180℃のオーブンで20分から30分焼く(焼き時間は料理書によってさまざまでした)
・焼きあがったらしばらく置いて粗熱をとり、熱いうちに切りわける

 私のオーブンでは20分では焼き時間が足りなくて、30分くらい焼きました。チョコレートが少ないので卵の香りの方が強く感じられ、砂糖の甘さが強烈です。これは廃糖蜜で作っていた時代のイメージをひきずっているブラウニーなんじゃないでしょうか。チョコレートは120~130gくらい使って、砂糖は60~70gくらいに抑えた最近のレシピのブラウニーのほうがやっぱり美味しいです。


 ちなみにボビー役のロバート・ウォーカー・Jr.は「刑事コロンボ」の『愛情の計算』で、他人の研究をパクるバカ息子役を演じてます。ホセ・ファーラー演じるシンクタンクの所長がバカ息子のために同僚を殺す犯人で、有名な『禁断の惑星』のロビーくんがゲスト出演している回です。


 


 後味までも気持ち悪い映画でしたが、ムーグはYMOとか矢野顕子とかを通じて私にもなじみのある楽器なので、自分のトラウマ映画の音楽をモート・ガーソンが作っていたと知ることができたのは楽しい体験でした。しかし「東京は夜の7時」とか「いろはにこんぺんとう」とか「ト・キ・メ・キ」とか再発CDももう廃盤なんですね。

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