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2012.06.01

ポエトリー アグネスの詩(2010年)

Anzu02
ソウル駅前で韓国の杏を生で食べてきました。

 やりたいやりたいと日頃から唱えていると本当に実現するみたい。韓国に行きたい行きたい行きたい行きたいと唱えていたら、女子大時代からの友人が先週末に韓国へ連れてってくれました。直前まで仕事をして徹夜でボロボロだったのに、現地に着いたら、夜八時でもまだ明るいソウルにテンションMAX! そして旅の目的は決してそれだけではないのだけど、やはり韓国の食べ物は食べても食べても魅力的で興味は尽きませんでした。


 絶対に食べると決めていたもののひとつ、生の杏も食べました。食べたかった理由は、三月に銀座テアトルシネマで見たイ・チャンドン監督『ポエトリー アグネスの詩』の主人公が杏を生で食べていたからです。日本では生で食べることがないのに隣の国では違うんだなあというのがまず新鮮で、かつ、『マルメロの陽光』のマルメロのように『ポエトリー』の杏も、杏を見ているつもりが杏に見られている気分になる杏、なんだか心を解放してくれる杏だったので、私も韓国の杏と対面してみたいなあと思ったのでした。


 


 主人公のミジャ(ユン・ジョンヒ)は美人でおしゃれが好きな六十六歳。介護の仕事をしつつ、釜山で働く娘の代わりに孫のジョンウクを育てています。ある日、体の不調を感じたミジャは病院に行き、アルツハイマーが進行していると告げられますが、医者の診断すら忘れてしまい、詩作教室に通い始めて詩に夢中になっていました。そんなとき、ジョンウクの友人のギボムの父親(アン・ネサン)に呼び出され、ジョンウクら中学生の男子グループが集団暴行事件を起こし、被害者の少女が自殺したことを知ります。男子グループの親たちは少女の親に慰謝料を払って事件を隠蔽することを計画し、ミジャも言われるまま慰謝料を用意しようとするのですが、少女の葬式や家を密かに訪ねるうちに……という物語です。



 今年の二月、三月に見た映画は、『ヤング≒アダルト』も『ヘルプ 心がつなぐストーリー』も『ヒューゴの不思議な発明』も『ポエトリー アグネスの詩』も、大雑把に言ってしまえば「女子が世界の語り手になる」という映画だったけど、そういうのが流行している? そして日本でも、『しあわせの雨傘』のカトリーヌ・ドヌーヴとか、この映画のユン・ジョンヒとか、『母なる証明』のキム・ヘジャみたいに、オーバー六〇歳女子が活躍する映画がもっと作られたらいいのに。この『ポエトリー』のミジャ役なんて吉永小百合とかでリメイクしたら似合うんではないでしょうか。


 


 印象的な杏は、被害者の少女が生まれ育った貧しい農家をミジャが訪ねるシーンに登場します。ミジャが少女の家を訪れたのは金で和解してくれるよう母親と交渉する役目を押し付けられたからなのですが、アルツハイマーのせいか用事をすっかり忘れたミジャは、少女の母と世間話をし、熟して地面に落ちた杏を食べ、その甘さに感激して帰ってきてしまいます。私がソウル駅のロッテマートで買った杏はあまり甘くなく香りも控えめ。『ポエトリー』の季節は夏、日本で生食用に栽培されているハーコットという種類の出荷時期も夏なので、五月末は杏を食べるにはちょっと時期が早かったかもしれません。


Anzu03
杏は韓国語で살구。七個で八〇〇〇ウォン。


 久々に旅をして実感したのは、外国を見物に行ったつもりが、自分こそが珍しいエイリアンなのだなあということ。言葉も喋れないエイリアンは、必死にアピールして、まずは自分を見てもらうことから始めないと何もできませんでした。韓国まで杏を見に行って、私こそが見られている杏みたいだなあって思える時間を過してきました。


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杏を買ったとき、ソウル駅前広場では音楽会が催されていた。


 

 


 

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コメント

初めまして。1930年代の食文化を検索してて、このブログに巡り会いました。『マルメロの陽光』20代の頃に観ました。懐かしいです。

投稿: miniko | 2012.06.05 09:48

はじめましてcherry コメントありがとうございます! 私も『マルメロの陽光』は若いときに見て、昨年ひさびさに見返したら初めて見たときよりさらに沁みてよかったです。また十年後に見たらもっと沁みる気がしました。minikoさんのページ拝見しました! minikoさんの作品もマルメロの実のように、いろんなことを語りかけてくるように感じます。最初は色が美しいな形がかわいいなと思って見ていたら、中に不思議なものが入っていたりして、見ているといろんな感情が湧いてきて、ずっと見ていても飽きませんでした。

投稿: マリコ | 2012.06.07 12:14

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